僕と君の物語
第一話『僕と新学期』
第二話『僕と隣人と居候』
第三話『僕と雨宮と父の電話』
第四話『僕とかえでと休みの日』
第五話『僕と登校と月曜日』
第六話『僕と夜と旅行計画』
第七話『』
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*書きかけです* アルセリア様の「僕と君の物語」の七話目です。
帝國史書係 セイチャル・マクファロス
文・絵/アルセリア様 *1 / *2 / *3 / *4 |
*1 ▲ いない方がいい人。 それが私の自己評価。 迷惑にしかならない。 邪魔にしかならない。 負担しかかけない。 消費しかしない。 恐らく生涯に渡って、何も生み出さない存在。 それが私の自己評価。 でも、母は言う。 そんなことを言わないでほしいと。 私が産まれてくれて、育てることができて、嬉しかったと。 そして、私に幸せになって欲しいのだと。 私が幸せになることが一番の幸せなのだと。 日々疲れていくのが目に見える、母は言った。 どうやら私は、何を生み出すこともできなくても、母を幸せにすることはできるらしい。 でも、その方法がわからなかった。 母を幸せにする方法。 私が幸せになる方法。 そんな方法を、私は知らなかった。 でも、それを私は母に告げなかった。 どうすればいいのかを、母に聞くことをしなかった。 きっと知らないから。 こんな体を持った人間が、どうやったら幸せになれるのか。 普通の体を持って産まれた母は、それを知らないだろうから。 だから私は、幸せになる方法がわからないと、母に教えなかった。 この体でどうすればいいのかわからないと、伝えなかった。 そしてそれが、私の生き方になった。 見せ付ける。 周囲に、私はこんなに自由なのだと見せ付ける。 私は、こんな体の不自由などなんとも思っていないと、見せ付ける。 楽しそうな姿を、見せ付ける。 母を幸せにするために。 幸せがわからなくても、私は幸せなのだと伝え続けた。 そして、高校二年生になったあの日、私は無理をした。 自分の限界を、わかっていなかった。 自分は自由だと伝えるために、徒歩で学校に向かい、力尽きた。 立っていられなくなり、地面にそのまま座り込んだ。 失敗した。 まずい。 このままじゃ、まずい。 そんな思いで、頭が一杯になった。 このまま死ぬということはないだろう。 人通りが一切ないということは、ないはずだ。 でも、このままでは、『倒れた』という事実が母に伝わる。 それだけは、避けなければならない。 そう思いながら、私はとうとう地面に倒れ伏した。 そんな私に、声をかけてきた人がいた。 そのすぐ後ろには、覗き込んできている女の子もいる。 服装を見る限り、どうやら同じ学校の生徒のようだ。 ほとんど間髪おかず、倒れた人間に声をかけてきたことに、私は少し驚いていた。 救急車を呼ばれるのはまずい。 そう思った私はとっさに、日光にやられて休んでいるなどと、その人に伝えた。 そこから先は、驚きの連続だった。 背中におぶられて、学校まで走って運ばれた。 クラスメイトの男子に、投げ渡された。 騒がしい後輩に、机ごと押し倒された。 そんな彼らに、私は、いつもの『自由な私』で接してみた。 誰もが、どう接していいのかわからなくて、苦笑いを浮かべて離れていった、自由で不自由な私。 それでも他の方法が浮かばなくて、保ち続けてしまった、理解不能な私。 でも、それ以上に彼らは、私にとって理解不能で―― ――そして私は、受け入れられた。 |
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