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*書きかけです*


アルセリア様の「僕と君の物語」の七話目です。
帝國史書係 セイチャル・マクファロス

文・絵/アルセリア様
*1*2*3*4
*1  ▲
 いない方がいい人。
 それが私の自己評価。
 迷惑にしかならない。
 邪魔にしかならない。
 負担しかかけない。
 消費しかしない。
 恐らく生涯に渡って、何も生み出さない存在。
 それが私の自己評価。
 
 でも、母は言う。
 そんなことを言わないでほしいと。
 私が産まれてくれて、育てることができて、嬉しかったと。
 そして、私に幸せになって欲しいのだと。
 私が幸せになることが一番の幸せなのだと。
 日々疲れていくのが目に見える、母は言った。
 
 どうやら私は、何を生み出すこともできなくても、母を幸せにすることはできるらしい。
 でも、その方法がわからなかった。
 母を幸せにする方法。
 私が幸せになる方法。
 そんな方法を、私は知らなかった。
 でも、それを私は母に告げなかった。
 どうすればいいのかを、母に聞くことをしなかった。
 きっと知らないから。
 こんな体を持った人間が、どうやったら幸せになれるのか。
 普通の体を持って産まれた母は、それを知らないだろうから。
 だから私は、幸せになる方法がわからないと、母に教えなかった。
 この体でどうすればいいのかわからないと、伝えなかった。
 
 そしてそれが、私の生き方になった。
 見せ付ける。
 周囲に、私はこんなに自由なのだと見せ付ける。
 私は、こんな体の不自由などなんとも思っていないと、見せ付ける。
 楽しそうな姿を、見せ付ける。
 母を幸せにするために。
 幸せがわからなくても、私は幸せなのだと伝え続けた。
 
 
 そして、高校二年生になったあの日、私は無理をした。
 自分の限界を、わかっていなかった。
 自分は自由だと伝えるために、徒歩で学校に向かい、力尽きた。
 立っていられなくなり、地面にそのまま座り込んだ。
 
 失敗した。
 まずい。
 このままじゃ、まずい。
 そんな思いで、頭が一杯になった。
 このまま死ぬということはないだろう。
 人通りが一切ないということは、ないはずだ。
 でも、このままでは、『倒れた』という事実が母に伝わる。
 それだけは、避けなければならない。
 そう思いながら、私はとうとう地面に倒れ伏した。
 
 
 そんな私に、声をかけてきた人がいた。
 そのすぐ後ろには、覗き込んできている女の子もいる。
 服装を見る限り、どうやら同じ学校の生徒のようだ。
 ほとんど間髪おかず、倒れた人間に声をかけてきたことに、私は少し驚いていた。
 
 救急車を呼ばれるのはまずい。
 そう思った私はとっさに、日光にやられて休んでいるなどと、その人に伝えた。
 
 そこから先は、驚きの連続だった。
 
 背中におぶられて、学校まで走って運ばれた。
 クラスメイトの男子に、投げ渡された。
 騒がしい後輩に、机ごと押し倒された。
 
 そんな彼らに、私は、いつもの『自由な私』で接してみた。
 誰もが、どう接していいのかわからなくて、苦笑いを浮かべて離れていった、自由で不自由な私。
 それでも他の方法が浮かばなくて、保ち続けてしまった、理解不能な私。
 でも、それ以上に彼らは、私にとって理解不能で――
 
 ――そして私は、受け入れられた。
 
 
 
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