魂への寄生 〜術魂魄学科〜   戻る
 もしも神の存在が帝國で教える国教の通りならば人間は永遠に不幸である。
 
 この世界と言う修行場の上で永遠にもがき苦しみ、禍福を繰り返して行くのだろう。
 
 善と悪が世界に現れるのは必然。
 反目しあうのも必然。
 人々が権力を求めて争うのも必然。
 本来、欲を抑制する為の宗教内ですら規模が大きくなれば権力闘争が起きる。
 それもまた必然。
 
 人は人と仲良くしたいと思う。
 幸せになりたいと思う。
 愛が欲しいと思う。
 
 それ故に悩み、苦しみ、喜び、悲しむ。
 
 そうなる事によって人が、人の魂が練磨されて行くのだ。
 そして神は練磨された魂の中から必要な人材を選ぶ。
 
 人は絶対に「不完全」なものとして生まれる。
 「不完全」でなければならないのだ。
 そうでなければ悩んでくれない。苦しんでくれない。
 喜んでくれない。
 だから人は「不完全」なものとして生まれる。
 いわば「人」であるならば「不完全」な状態が「完成された人の状態」なのである。
 もしも「不完全」でなければ、それは「人」では無い。
 この世に生まれたと同時に死ぬであろう。
 
◆
 
 さて。
 上記が帝國で教える国教の概要のようなものである。
 当学院は術士の為の学び舎であるのでここから先が本題と言える。
 
 この国教の概要が「本当」であり「神」も「魂」も存在すると過程した場合、ある仮説が立てられる。
 
 まず、この話を聞いて欲しい。
 「ハリガネムシ」という寄生虫がいる。
 この寄生虫はカマキリに寄生する寄生虫である時期が来るとカマキリを操作し、水辺へと向かわせる。
 ハリガネムシは水辺で産卵するので水辺に行く必要があるからだ。
 カマキリは本来、草むらで獲物を待つ生き物。
 もしも水辺に行くとなれば鳥などの天敵に襲われる心配をしなければならない。
 それなのにカマキリは危険を冒してまで水辺へと向かうのだ。
 
 このように寄生虫に神経を支配されたカマキリ。
 では「カマキリ一族」は何故このハリガネムシを駆除しないのか?
 
 理由は簡単だ。
  1 水辺に行くのがハリガネムシが原因と分からない。
  2 ハリガネムシを駆除する方法を知らない。
  3 何よりもハリガネムシの存在を知らない。
 カマキリがハリガネムシが原因で水辺に行くと分かっていて、それでいて駆除する方法が分かっていれば、問題は無いはず。
 しかしそうでは無い。
 カマキリはハリガネムシの存在すら知らない為に操作され続けるのだ。
 知っててもハリガネムシをどうにもできないから操作され続けるのだ。
 
 さて。
 人間に「魂」がある場合、もしも人間の魂に「寄生虫」が巣食ったら人間はどうなるだろう?
 その寄生虫が人と人を争わせる権威欲に取り付かせる。
 疑心暗鬼にさせる。
 愛欲に走らせる。
 そんな事が出来たらどうなるだろうか?
 
 人間は科学しか知らない。
 科学でいくら人体をバラバラにしようが魂の寄生虫までは発見できない。
 何かあっても脳内物質異常分泌の一言で片付けられて終わりなのである。
 
 この「魂」に人が人として干渉できれば、どんな事ができるだろうか?
 肉体への干渉では無い。
 魂への干渉。
 
 当学院の「術魂魄学科」はこの魂への干渉の魔術を深く研究するものなのだ。

 
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