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●月読帝國の歴史

 約3000年前
  この大陸(便宜上、高宮大陸とする)を統一していた王朝があった。
  現在まで続く長期王朝、月読王朝である。

  この王朝がいつから続いているのかは不明であるが、
  約3000年前には既に存在し、国家は中弛期に来ていた。

  各地では領主達がそれぞれ争い、国家の覇権を競っていた。
  皇帝はお飾りとなり、なんの権力も持たず、ただただ眺めるばかりであった。

  日本で言う所の戦国時代(室町時代〜安土桃山時代)を思い浮かべてもらえれば、
  大体の想像は付くだろうか?

 約2000年前
  高宮大陸の有力勢力の内の一つ、雪輝都が浮き上がり移動。
  東本州と川上島の間にある、小さな島に移動したのだ。
  移動した理由も浮き上がらせた技術も未だに解明されていない。
  
 約1000年前
  またもや雪輝都が移動。
  1000年間と言う長きに渡って住み続けた小島をアッサリ見限り、
  現在の位置に移動する。
  今回の移動も理由は解明されていない。
  小島には今でも取り残された雪輝都の一部が残っていると言う。

 約800年前
  高宮大陸全土に渡る大飢饉が10年連続で発生。
  四人に一人が餓死するというとんでもない大打撃。

  今まで小競り合いをしていた各都市の領主達が少ない食料を巡って総力戦を行なう。

  その総力戦の最中、
  大魔導士パイシュテが狂ったように禁呪を唱え続け、
  その影響で各地の精霊バランスや魔法バランスが乱れてしまい、
  各都市にあった魔法道具(軍事兵器から家電、使役傀儡まで全て)が暴走した。
  一部の精霊も暴走し歯止めが利かなくなってしまう。

  これにより、全ての都市が焼け野原と化した。

  何もかも無くなってしまった。
  後にこの時を「消滅の日」と呼んだ。

  なんとか生き残った皇族と国民数百人は、
  現在の帝都の位置まで移動し、そこに都を開く。

  各地で僅かに生き残った人々もいたようだが、
  その殆どが生活が立ち行かない為、帝都へと向かう。
  この時代、大部分の人間が帝都へ移住した。

 600年前
  約200年の頑張りにより、外の魔物に負けない屈強な防衛力と、
  安定した食料の供給システムを確立。
  また、冒険者システムも出来上がる。

  偶然なのか必然なのかは定かでは無いが、
  この時期の皇帝は賢君を多く輩出し、
  権威や権力、人望を復活させる。
  (※後に権威を皇帝が、権力を政府が引継ぐ)
  この頃、全時代を通して最も平和で安定した時代となる。

  さらに魔法による生活向上の為、帝立魔法学校(通称:魔術ギルド)が発足。
  無料にて魔法の勉強(修行)が受けられるようになる。
  (※大きく分けて一般通学の部と短期修行の部が有)

 232年前
  人間と精霊の間に協定が結ばれる。

   ●精霊→人間
    ・農作物を安定させ、飢饉が起きない様にする。
    ・冒険者を小さい悪性の生物(寄生虫、ウィルス、黴菌、蚊など)から守ってくれる。
    ・冒険者である限り若さが保てる。冒険者を辞めるとそこから普通に加齢していく。
     ※ただし若さを保っている間は月経などの身体の周期が止まり、妊娠しない。
      家庭を作り子供を作るのであれば冒険者を辞める他ない。

   ●人間→精霊
    ・自然環境を守り、精霊に負担をかけない。
    ・冒険者一人一人に火、水、風、土のいずれかに属してもらう。

  精霊の加護により、冒険者は生き返れるようになった。
  これにより、熟練した冒険者が増え帝國の活性化に繋がった。
  冒険者である限り若さが保てる事から、
  冒険者を辞めない人が続出するのではないかという懸念があったが、
  冒険者のような生活をしていると冒険者歴20年前後で家庭を持ちたくなるようで、
  高年齢冒険者はあまりいない。

  精霊は自然環境からエネルギーを得て生きている為に、自然環境の破壊は死活問題である。
  植物などからは少量のエネルギーをコンスタントに長期に渡って得ることが出来、
  動物などからは大量のエネルギーをランダムに短期間に得ることが出来る。

  植物は生まれた時からなんらかの属性を持ち、精霊と共存共栄しているが、
  動物の場合は生まれた時は無属性で、大体が死ぬまで無属性である。
  偶然に属してしまうのを待つしかない。(無属性からはエネルギーを得れない)
  精霊にとっては動物が属性を持つのは極稀に起きるボーナスイベントのようなものだった。

  それを人間と言う、最も活動的に動く動物の、さらに冒険者と言う人間の中でも
  一番活発的な類に属性を持たせる協定を結んだ。
  これはもう毎日ボーナスがもらえるような状態であり精霊の力は肥大して行く。

  行き過ぎる力は崩壊の元と感じ取った精霊王は余剰エネルギーにて「魔法生物」を生成し、人間と共に働くパートナーとする。
  この「魔法生物」は冒険者から一般市民まで幅広く行き渡り、人間の貴重な労働力となっている。

  余談だが精霊との協定の為に自然を保護するあまり、産業革命や工業化が発生しない。
  大量生産や効率化なども発生しない。
  また冒険者にあらゆることが頼める為、専門の運送会社や専門の警備員のような、
  大規模な組織的企業が生まれない。
  精霊はこれを意図してやっているようだ。

  精霊の協定は月読帝國のみならず、
  徐々に復興しつつあった月読帝國以外の国でも同時期に結ばれていた。

  当時の宰相 朝臣 介平(あそん かいへい)は、
  この協定を結んだ際、精霊が「再協定」と言い、
  また世に出たばかりの魔法生物を「古代」魔法生物と呼んでいる者が何故居るのかと
  精霊に聞いたが、答えては貰えなかった。
  現在もそれについて精霊は語ってくれていない。

 201年前
  当時の皇帝、月読薙夜がかつての勢いを取り戻すべく「大移民計画」を発動する。
  3000年前と同規模の領土を確保しようと言うのだ。
  ただ当時は文献が少なく、ただ漠然とこれくらいの領土があったという事しか分かっていなかった。
  とりあえず西へ向かい、深い森に突き当たったので、そこで止まり、移民地を構築。
  開拓を行い、日が沈み始めると一か所に集まって休む。
  その休む場所を「留晩地」と呼称していた事から出来た移民地の街を「留晩町」と名付けた。

  10年をかけて「留晩町」の基礎が完成すると、今度は南へと向かう。
  聖気を感じる大河を発見し、この近くに移民地を構築。
  夜になると月が綺麗な事から「月彩村」と名付ける。

  月彩村は12年かかって基礎が構築された。
  この12年の間に古代遺跡である「雪輝都」を発見する。

  発見時は「遺跡」だった雪輝都もあっという間に人が住みつくようになり、
  一大都市となった。
  なんらかの加護があるのか妙に住みやすいのである。

  留晩町と月彩村から雪輝都へ向かう為の丁度中間地点に大きな銀色の鈴が置かれた。
  留晩町の隊と月彩村の隊がその鈴を目印に合流し、
  休憩をとって雪輝都に向かうと言うものだったが、
  その銀色の鈴の周りに人が住むようになり、いつの間にか街になっていた。
  その事からここに出来た街の名前は「銀鈴市」である。

 141年前
  月読薙夜 崩御。
  享年82歳

  大移民計画を次の皇帝、月読雲夜が引継いだが、これ以上の版図拡大は困難となる。

  まず、古代遺跡の雪輝都よりも西へ住みたい言う人が居ない。
  雪輝都より先は内海もあることから、試しに移り住んだ人々が
  帝都と分断されてしまったような気分になり、直ぐに帰って来てしまう。

  また、留晩町から西ルートは深い森を切り開く必要や、赤覆山脈を切り崩す必要があり、
  とても出来ない無理な相談であった。

  南や北も同様の理由で、国民が帝都と分断された気分になり、移り住みたく無いと言うのだ。
  帝都はあの「消滅の日」から、力を合わせて皆で作った都市。
  そこから分断されて住むと言うのは、追い出されたような気分になるのであろう。

  慈悲深い皇帝は国民に嫌がる事を強制できずに、断念する。
  帝都内部の為政者からは莫大な資金がかかるという別の理由もあったようだ。

  この「大移民計画」はここで終了する。



 52年前
  当時の皇帝、月読連夜の調査隊により、
  雪輝都遺跡の奥深くより、多量の文献が発見される。
  文献を元に様々な過去の事も分かってきた。
  現在引き続き、文献の解析中である。

  余談ではあるが、この「月読連夜」と言う名前は初代皇帝の名前らしい。
  いつ頃からの慣例なのか不明であるが、皇帝は常に同じ名前を繰り返している。

  初代、月読連夜から、二代目、月読想夜、三代目、月読白夜、と、続き、十二代目、月読雲夜で終わる。
  そして、また、月読連夜に戻るのだ。

  帝國の記録には「何代目」と言う記述が無く、この十二種の名前の繰り返しを追って行くしかない。
  現在、残っている記録では、約3000年前の月読和夜(八代目の名)の物が最古であり、
  何順目の和夜なのかは分かっていない。

  ちなみに、男女での名前分けは無い。男性の連夜も居たし、女性の連夜も居たそうだ。

  ・名付け順
   連夜(1)→想夜(2)→白夜(3)→閑夜(4)→小夜(5)→音夜(6)→
   雅夜(7)→和夜(8)→宗夜(9)→涼夜(10)→薙夜(11)→雲夜(12)→連夜(1)へ戻る。

   れんや(1)→そうや(2)→びゃくや(3)→かや(4)→さよ(5)→おとや(6)→
   みや(7)→わや(8)→そうや(9)→りょうや(10)→なぎや(11)→うんや(12)→れんや(1)へ戻る。

 30年前
  月読連夜 崩御。
  享年70歳

  雪輝都遺跡の調査は息子の想夜に引き継がれる。

 10年前
  公的な雪輝都遺跡の調査は打ち切られ、冒険者に委ねられる事になる。
  現皇帝 月読白夜 が生まれる。

  尚、この年より冒険者の位置付けが変わった。
  軍や政府の「下請け」から「自由業」になったのだ。

 7年前
  白夜の父、月読想夜が突然引退し兵学校の校長になってしまう。
  月読白夜 3歳にして皇帝に即位。

 3年前
  月読白夜と高屋潤一郎宰相により、
  色々と申請が必要であった冒険者登録を大幅に規制緩和。
  これに伴い冒険局などの運営も大幅に変更される。
  曖昧だった部分や場所によって異なるルールが発生していたのも整備・統一された。


月読帝國 現皇帝 月読白夜
御歳10歳の女帝

 食べる事が大好きでグルメ料理からゲテモノまで幅広く食す。
 年齢の割りにしっかりと仕事はこなすものの、まだまだ遊びたい盛りなので宮殿を逃げ出す事もしばしば。
 強力な魔法を使いこなす為、宮殿の外で大事に至った事は無いが宰相以下臣下は肝を冷やす毎日である。

 帝國では珍しいアッシュブロンドの髪(太陽の下だと金髪に、人工灯(蛍光灯など)の下だと銀髪に見える髪の毛)の為、脱走後見つけるのは容易。
 白夜本人はなんで直ぐに見つかるのかが分かっていない。


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