皆と過ごす日々    メニューへ戻る
少し(?)鈍感の進さんと仲間たちの冒険の日々を綴った作品。
タイトルからするとノンビリした牧歌的作品になると思いきや結構熱い展開です。
この小説をここに展示させていただきます。
帝國史書係 セイチャル・マクファロス

文/進様
*1*2*3*4*5
*1  ▲
 
「ふむ……、よし依頼はこれにて達成じゃ」
「ありがとうございます陛下、それと次の依頼はありませんか?」
「ふむ…ちと難しい依頼じゃが…、やってみるかの?」
「はい、最近は色々と調達などが多かったので」
「依頼の内容はある物を見たいと言う冒険者の依頼なのじゃが…」
「見たい物…ですか?」
「ふむ…、砂漠に古い建物があるらしいのじゃがそれが見つけられないのだと言うのじゃ」
「それを…私に?」
「そうじゃ、その建物を見つけてそれがどんな物かを知らせて欲しいと言うのが今回の依頼じゃ」
 
 
「……分かりました、やってみましょう」
「がんばるのじゃぞ〜」
 
 ――ギィィィ〜…バタン…
 
 
 
 さて…砂漠となると食べ物や水が必要になるな……
 食べ物はまだ手元に5、6個あるし…心配は要らないな…
 
「あっ…、進〜次の依頼は何〜?」
「次は砂漠だ」
「え〜あそこは日焼けが心配だし〜それに熱いし〜……」
「綾鈴…文句は言わないの」
「……は〜い」
 
 この子は綾鈴(あやね)、何時も一緒にいるパートナー
 無人島に行って色々とスキルを覚えて家の子の中では一番強くなった子
 イラン事を言うと毒撃をしてくるちょっと危ない奴…
 性格は元気な方なんだけど寂しがりやだったりする
 
 
「食べ物は今持ってるだけで十分だし…水は銀鈴市で買えばいいし…」
「後古代の実も〜」
「はいはい…分かったましたよ〜」
「やったぁ♪」
「じゃあ行くか」
「うん♪」
 
 
 
 
 
 〜銀鈴市〜
 
「相変わらずチコの木がいっぱいあるな〜」
「イキミさんの料理食べたかったな〜」
「まずは水だな」
「ちょっと聞いてるの〜?」
「聞いてるよ、とにかく早く砂漠に行って建物を見つけて酒場に行かないと…」
「けどもう空が暗くなってきたよ?」
「……、今日は酒場には行けないか…まぁ皆がやってくれるだろ」
「じゃあ宿を取ってくるね〜♪」
「あっ…おい! ……行っちまった…」
 今からでも行けるけど……う〜ん…
 まぁ今日くらいゆっくりしてても良いよな
 
 
 
「お〜い、進〜泊まれる所見つかったよ〜」
「あ〜分かった〜今行くよ〜」
 さて…明日にそなえて寝るか……
 そう思いながら俺は宿へ向かった…
 
 
 何だか今日は騒がしいな……
「おっ、いらっしゃい珍しいねあんたがここに来るなんて」
「今日は依頼でね、それと…あいつ何処に行ったんだ?」
「あぁ、お嬢ちゃんならあそこで食べ物を食ってるよ」
 おっちゃんの指をさす方向に綾鈴がいた
 相変わらずバクバク料理を幸せそうに食べている
「……またか……」
「何時も良い食いっぷりだね〜惚れ惚れしちまうよ」
「こっちはウンザリするほど見たよ」
「はっはっはっ、早く止めないとまた破産するぞ」
「ところで今どの位だ? おっちゃん」
「五千位だ、良かったな」
「あぁ、酷い時は2万は軽く超えるし…お〜い綾鈴〜そこまでだ〜」
「え〜まだまだ逝けるのに〜」
「これから食べれなくしてやっても良いんだぞ〜」
「うっ…、わかった〜」
「部屋は何処だ? おっちゃん」
「二階の方だ、ゆっくりしていけよな」
「はい、宿泊代だ」
「いい夢をな」
「あぁ、御休み」
「御休み〜♪」
 
 
「綾鈴」
「ん? 何?」
「明日は砂漠だ、気を抜くなよ」
「…うん♪」
 

 
 (おっ…重い……)
「Zzzz……」
 上に乗っていたのは綾鈴だった
 幸せそうにグッスリ寝ている
 
 
 (むっ……体が動かない……)
 よく見てみると綾鈴がガッチリと抱きついて寝ている
 もちろんみっちり密着しているのであれも当たっているわけで……
 
 
 (むっ…胸が〜〜!!! いや……その前にここから出る事が先決だ…)
 ジタバタと動いてみるが全く動かない
 逆に動けば動くほど絞め方が強くなっている
 
 
 (いっ……息が…息が〜〜〜!!!)
 ………しばらくの沈黙の後、起きて綾鈴が蘇生治療おこなった
 
 
「お? 起きたか」
「おはよ〜♪」
「おはよ〜……」
「ん? どうした? 元気が無いな」
「朝起きたら窒息死したよ……」
「はっはっはっ、ここに来る度に死んでるなお前は」
「うるさい……朝食でも用意してくれ」
「はいはい、テーブルの方で待っててくれ」
「は〜い♪」
「食べ過ぎるなよ綾鈴」
「うん♪ 分かってる分かってる〜♪」
「はぁ……、大丈夫かなこの先…」
 砂漠での依頼は滅多に無いから大変だろうし…う〜ん…
 
 
「まっ、どうにかなるよ♪ …たぶんね」
「……そうだな」
「出来たぞ! 目玉焼きにベーコンとウィンナーにご飯だ」
「わ〜♪ おいしそ〜♪」
「朝はサッパリしているのが良いからな! じゃんじゃん食えよ!」
「は〜い♪ じゃ〜…後30個位お願いしま〜す♪」
「おいおいそんなに食うなよ綾鈴」
「腹が減っては戦は出来ぬって言うでしょ?」
「これから戦いに行くんじゃねーんだぞ?」
「ま〜それは置いといて〜…」
「置くな!」
「ぶ〜」
「はいおまち! 30個出来たぞ!」
「わ〜い♪ さ〜食べるぞ〜♪」
「あっ……ふぅ……」
 まっ、別に良いか…
 コイツの嬉しい顔を見るのもいいしな
 
 
 
 
「……? どうしたの? 進?」
「ん? あぁ…別に」
「ふぅん…」
「はっはっはっ、どうしたお前らしくないなどうした?」
「いや…別に何でもねえよ」
「あっ♪」
 パクッ! 
 
「あっ! 綾鈴! 俺のウィンナーを!」
「おいひ〜♪」
「返せ〜!」
「やだも〜ん♪」
 返せ〜! と叫ぶ進だが綾鈴はテーブルの周りを逃げ回っていた
 
 
「仲のいい二人だな、奴らは」
「はい♪ そうですね」
 
「か〜え〜せ〜〜」
「いやだも〜ん♪」
「う〜が〜〜!」
 
 
 
 
 騒ぎが収まってしばらくして後……
 
「美味しかった〜♪」
「アレからウィンナー全部食っちまって……ブツブツブツ……」
「怒らないでよ〜」
「ブツブツブツ……」
「あ〜ん、誰かこのブツブツ止めて〜」
「……まぁブツブツ言ってても始まらないか…行くぞ、綾鈴」
「あっ…うん♪」
 

 
 〜砂漠〜
 
 
「見つかんないな…」
「進〜熱い〜」
「我慢しろ」
「ぶ〜」
 
 
 これは思っていたより難しい依頼だな…
 まだ食べ物と水はあるけど……今日中に終わるかが心配だな
「ね〜この服脱いでいい〜?」
「駄目に決まってるだろ、それに脱ぐと日焼けするぞ」
「何か熱いとそんなのど〜でも良くなってきた〜」
「と・に・か・く! 脱ぐなよ!」
「……は〜い」
 とは言われても熱いものは熱いな〜……
 脱たい〜…熱いよ〜……
 
 
 (けどおかしいな…、砂漠は少し大きいが他の冒険者だって探索してるんだ普通は見つかるはずなんだがな……)
「ごめん…やっぱり脱ぐ〜」
「! ばっばか! 脱ぐんじゃねぇ! …ん?」
「ん〜? どうしたの?」
「いや…あっちの方に何か見えたんだけど…」
 進が指を指す方向を見ても何も無い
 ただ砂漠が目の前いっぱいに広がっているだけだった
 
 
「何にも無いじゃん、みまちがえじゃないの〜?」
「見間違えじゃ無いな……綾鈴…ちょっと下がってろ」
「あっ……うん」
 
「………いけっ! ウォーターマグナム!」
 水の弾が目にも止まらぬ速さで何かに当たった
 
「お〜、何かに当たった〜」
「見間違えじゃかったか……何か建物が見えてきたな」
 目の前に現れた物は古びた建物だった
 
「うわ〜古い建物だね〜」
「これで依頼は達成したも同然だな、中を調べるぞ綾鈴」
「は〜い」
 
 
 ――ギィィィーー
 中は結構涼しいんだな…
 魔法で隠す物がここにはあんのか…?
 ……? あれは…魔方陣か?
 すごい……こんな複雑な魔方陣見た事が無い……
 この魔法陣…一体誰が作ったんだろうか……
 
 
「……誰なの?」
 ?! 人か? こんな古びた建物に人が居るなんてな……
 
「進…あの子は魔法生物みたい…」
「まぁ当たり前か、こんな古い建物の中に人が居るわけねえよな」
 
 
「……」
「魔法生物は保護しないとな君、立てるか?」
「……はい」
「綾鈴、古代の実はあるか?」
「うん、10個位」
「そんなに持ってきたのかよ…まあいいやこれ…食べれるか?」
「……はい」
 そお言うと古代の実を食べた
 
 
「……ありがとう…ございます」
「どうも、怪我は…無いみたいだな…」
「どうしてここの場所が分かったの……?」
「…ん〜何か変だったから…かな?」
「………」
「ん? どうしたんだ? 綾鈴?」
「……何でも無いよ〜」
「? まぁいいや、とりあえずここから出ようか…それと君…名前は?」
「……高奈…高奈よ」
「そっかいい名前だね、じゃあ行こうか高奈ちゃん」
「ちゃ……」
 魔法生物の高奈は頬を赤く染めた
「ははは、冗談だよ」
「……! 進…何か来るよ!」
「えっ?! マジかよ」
「結構デカイ…これは?」
 
 
「避けろ! 綾鈴!」
「うん!」
「キャッ! ?」
 
 ――ドバァーー! 
 
 
「グオォォォーー!」
 
 
「さっ…サンドワーム?! ちぃっ!」
「相当デカイよ! どうするの?」
「さ〜…どうするかねぇ…」
 
「グオォォォーーー!!」
「きっ…来た〜! 逃げるぞ! 綾鈴!」
「うん!」
「高奈…しっかり捕まっとけよ!」
「はっ…はい!」
 
 
「む〜……」
 
「ガゴォォーー!」
「おっと!」
 すげぇ威力だな……当たったら一発アウトって所だな
 
 
「逃げてても仕方ないな…逃げながら反撃するぞ! 綾鈴!」
「うん! ……はぁぁ〜!」
 
 ドゴォーーン! 
 
「グオォォーー!」
 
「駄目だよ! ぜんぜん効いてない!」
「どうするかな〜…おっと」
 ――バゴォーン! 
 
「ん〜…綾鈴の魔法効かねえし…どうするか…」
「どうしよ〜」
「あっ! そういえば……」
 そおいうと進はひょうたんを取り出した
 
「ひょうたんを取り出してどうするの?」
「え〜これじゃない…これでもない……おっ? あったあったこれだ」
 ひょうたんから取り出したのは緑色の玉だった
 
「魔法の玉? 何でそんな物を?」
「護身用だ、これを使って追い払うと言う作戦だ」
「上手くいくのかな〜?」
「やってみないと分からないだろ? 行くぞ」
「よ〜し良いよ!」
「そら!」
 進は魔法の玉をサンドワームに向かって投げた
 
 
「グオォォーー!」
「ウォーターマグナム!」
「迸る雷撃!」
 
 
 ――カッ! ドゴォォーン! 
 玉に魔法が命中し魔法の玉が爆発した
 
 
「グオォォーー!」
 がサンドワームは倒れなかった
 少し怯んだだけで尚もこっちに向かってくる
 
 
「ちっ…駄目か…絶対絶命って奴か?」
「そうみたいだね…」
 
 
「グオォォォーーー!」
 
 くっ! 避けられない! 
 
「進!」
「この人を傷つけるのは…許さない!!」
「えっ! ?」
 
 
 神に逆らった事は分かっている
 自分が悪者である事も分かっている
 それでも
 それでも私は納得が行かないのである
 
 
 (リミットブレイク?!)
 空間が捻じ曲がり相手に大ダメージを与える魔法…
 洒落にならん威力だ……
「ガゴォォーー………」
 ――ズズゥン……
 
 
「あのサンドワームを一発かよ……」
「うっ………」
「あっ、高奈ちゃん?! 気を失ってる…」
「とりあえず雪輝都に向かおう! 今は水属性が占領していたはずだから」
「そうだなすぐに向かおう! 急ぐぞ!」
「うん!」
 

 
 ………ここは?
 暗い場所……誰かが私を見てる?
 とても嫌な感じが…
 
 こいつは知ってしまったな………あの事を……
 
 ……えぇ…、処分は?
 ……あそこに幽閉し記憶を消せ、それだけで良い
 …………ちっ、分かったよ
 
 私に何をするの……?
 やめて……頭が……痛い…
 うぅ…ああぁぁぁぁ……
 
 
 
「いや!」
 はぁ…はぁ…はぁ………夢……か…
 ……嫌な夢だった……
 …ここはベット? それに知らない部屋……
 
「ここ……何処だろう」
 …そっか……私…あの後リミットブレイクを唱えて気を失ったんだ…
 進って人と綾鈴さんという人に助けられたんだ……
 だからここはその人に関係する所…
 
 
「やぁ、起きたのかい?」
「キャッ! ?」
「あっ、ごめん驚かせるつもりは無かったんだけど……」
「すっ、すみません……え〜と…進さん? ですよね」
「あぁ、そうだけど?」
「何であんな場所に来たんですか?」
「あんな場所? あ〜依頼だったから」
「依頼?」
「依頼も知らないのかい?」
「はい全然知りません」
「依頼はその指定された物を調達したりする事だな」
「へ〜そうなんですか知りませんでした」
「まぁそれはともかく…お腹減ってない?」
「え…いっ、いぇ全然…」
 グゥ〜〜
「ぉ?」
「あっ……いただきます…よ」
「ふふふ、君のお腹は正直なんだね」
「………」
 高奈は頬を染めながらホッペを膨らませた
「さっ! こっちだ、ついて来てくれ」
「あっ、はい」
「え〜こっちだったかな? 最近自宅に帰ってなかったからな〜」
 (大丈夫かな…)
 
 
「あ〜思い出した、こっちだ」
 
 
 そういえば私…この人と出会って全然たってないのに何でこんなに気が許せるんだろう?
 ………不思議だなぁ……
 
 
「ここだ、お先にどうぞ高奈ちゃん♪」
「ちゃっ?! ……は…はい」
 やっぱり変な人かも……
 
 ――ガチャ…
「あっ、高奈さんおはよ〜♪」
「高奈だ〜!」
「ん? おぉ…新しい奴か」
「新しく来た子ってこの子〜? 可愛い〜♪」
「えっ……え?」
「これからよろしくね♪ 高奈♪」
「え〜い♪」
「えっ? キャーー?!」
 ネコっぽい女の子が高奈に向かって飛びつき高奈を押し倒した
「私の名前はニーナンよ♪ よろしく〜♪」
「えっ? えっ?」
「あ〜ごめんね驚かせたかな?」
「驚くも何も何なんですかこれは?!」
「君の歓迎会だよ皆でね」
「歓迎会?」
「そっ、君は俺を助けてくれたし…色々と持て成そう思ってね」
「持て成すって…私何も……」
「あのサンドワームから助けてくれたからね」
「えっ…でも……私…迷惑だろうし…」
「全〜然、それに行く場所も無いんだろ?」
「え…はい……」
「まぁ好きにしてくれな進は心が広いから」
「止めてくれよ…恥ずかしいから…」
「私は最初ここは嫌だなぁと思ってたけど結構いい場所だよ♪」
「……住めば都……」
「うぉ?! ビックリした…行き成り現れるなよ思菜…」
「…そっちがきずかなかっただけ…」
「私……でも……何か……」
「ん〜無理にとは言わないけどな〜」
「泊まってけよ〜」
「自分が良いと思った事を言えば良いのよ?」
「……そっちが良いとおっしゃるなら……」
「……決まりだな」
「うん♪」
「それでは改めて……ようこそ! 皆のお家へ!」
 
 
*2  ▲
 
 私はあの後皆さんと一緒に朝ご飯を食べて風に当って来ますねと言い一人でベランダに向かった
 いったは良いものの…あの後しばらく迷った……
 そしてやっとの思いでベランダを発見してここに立っている…
 
 
「……風…か…」
 ……これからどうしようかな……何時までもここに居るわけには……
 …それに私…一体何であんな場所に閉じ込められていたんだろう……
 私は一体何者なんだろう……昔の事も全然思い出せないし…
「……は〜…」
 
「どうしたのかニャ? 高ちゃん?」
「え?! に…ニーナン…さん………?」
「おっ♪ 覚えてくれてたのかニャ? 嬉しい〜ニャ〜♪」
「私に出来る事は…これ位しか……」
「私……ここに居て良いんでしょうか……」
「良いんじゃにゃいの? 進が良いって言っているんだから」
「けど…私……」
「う〜ん、暗いニャ〜暗すぎニャ〜」
「え? 暗い? まだ朝ですよ?」
「そおいう意味じゃにゃいの」
「じゃあどおいう意味なんですか?」
「心が暗いニャ〜と思ってね〜」
「心が…暗いんですか?」
「何か高ちゃんの心には暗いものがあると思みょうの」
「暗い…もの……?」
「何か変な感じのものが渦巻いてるっていうか〜ん〜なんて言えばいいのかニャ〜?」
「渦巻いてる……?」
「うん、それが高ちゃんの心を暗くしてるって感じ」
「…………」
 私の過去に何があったのかな………
 
 
「まぁ暗い話はともかく〜」
「はい?」
「迷わない様にここを案内してあげるニャ」
「え?」
「さっき風に当ってきますねって言ってたから気になって付いて行ったら迷ってたでしょ? なかなか可愛かったニャ♪」
「み……見てたんですか……? ニーナンさん…」
「気配を消す事とかが私の特技なの〜、覚えておくと良いよ高ちゃん♪」
「は…はぁ…?」
「それじゃあ行こうかね高ちゃん♪」
 

 
「あら、ニーナンどうしたの?」
「ちょっとね〜高ちゃんが迷わないように案内しているの〜」
「ふふふ、私の名前は麗奈よって言うのよろしくね高奈ちゃん♪」
「あっ…、よろしくお願いします……」
 またちゃんずけ……
「ふふふ、またね♪」
「あっ…、はい…また」
「麻里姫〜愛李〜零魅〜売れ行きはどう〜?」
「ん〜まあまあね」
「微妙〜」
「普通よ」
「あれ? 麻里姫〜思菜は〜?」
「食べ物とか食材を取りに行ったんだけど……何処に行ったのかしら?」
「……ただいま…」
「あら、そこに居たの?」
「はい…」
「森の動物に…食用植物…魔獣っと、全部そろったわねありがとう思菜♪」
「………」
「あら〜? 顔赤くしちゃって〜照れてるのかな〜この子は♪」
「……からかわないで…愛李…」
「はいはい、早く作るわよいそがないといけないんだからね」
「は〜い、分かりました〜」
「あの…ここでは何をしているんですか?」
「ん? あぁここでは冒険者用の料理を作って販売する所なんだけど……」
「だけど?」
「進がほとんど食べちゃって偶にしか販売できないのよ」
「へっ…へ〜?」
「龍評価を上げるためだから仕方ないけどね」
「龍評価…ですか?」
「ほんとに知らないの?」
「はい…全然知らないんです…」
「じゃあ教えてあげるわね龍評価って言うのは……」
「精霊等が与えてくれているという称号の様な物でそれを溜めればその属性の王になれたり爵位を授かったり出来るのよ♪」
「愛李……、まぁ龍評価が100以上だったりすると誰かに戦闘等で負けると零になっちゃうものって感じよ」
「まぁ私達もただ精霊やら王様から貰えるって言ってたけど私達も良く分かんないのよ」
「へ〜? そうなんですか……」
「言ってる私達もも判らないのよ」
「まぁそれが龍評価ってものよ」
「ん〜難しい話は後で…次行くニャ〜」
「あっニーナンさん…、皆さんありがとうございました!」
「いぇいぇ、こちらこそありがとう」
「また来て下さいね」
「またね〜♪」
 
 
 
 
「次はこっちニャ」
「あっ、はい」
「ここは工房ニャ、アトリエとか言ってる奴も居るニャ」
「工房ですか…一体何を作ってるんでしょうか?」
「入って見ればわかる事だニャ、ウィンネ〜居るかニャ〜?」
「ん?」
 これは……?
 小説みたい……
 タイトルの名前は……皆と過ごす日々?
 
「こっちニャ、高ちゃん」
「えっ? あっ…はい」
 
 
 
「? アツッ……」
「また作ってるのかニャ?」
「あぁ、いらっしゃいニーナン…? その子は?」
「新しく入って来た高奈と言う子ニャ」
「どっ…、どうもです…」
「歓迎会行けなくてごめんね高奈ちゃん」
「えっ…、いえ…そんな…」
「あ! そうだ…え〜と……あった! 行けなかったお詫びにこれを差し上げますね」
「………これは……絵?」
「お〜これは皆が楽しそうにしている絵だね〜」
「えぇ、自己評価100点の絵よ♪」
「えっ…でもこんな大切な物…」
「良いのよ、これは私の気持ちよ受け取ってちょうだい」
「………ありがとうございます……ウィンネさん……」
「ふふふ、どういたしまして高奈ちゃん♪」
「あの……」
「ん? な〜に? 高奈ちゃん」
「あの机の上にあった小説は?」
「あぁアレは今書いている小説よまだタイトルだけだけどね」
「そうなんですか……けどどんな物語にするんですか?」
「ん〜…私達の生活を舞台にした物にしようと思っているのよ」
「ね〜ね〜私も出てくるのかニャ?」
「もちろんよ、み〜んな出てこさせようと思うの」
「まさか…私も?」
「言ったでしょ? 皆って」
「ほっ…ホントですか?」
「えぇホントよ、ふふふ良い物語になりそうね」
「はっ……、はぁ…?」
「さっ、次行こうニャ」
「あ…、また今度ここに来て良いですか? ウィンネさん…」
「もちろん、楽しみにしているわ♪」
「それじゃあ…また」
「またね♪ 高奈ちゃん」
 
 
 
 
 ………何か大変な目に会いそうだけど…やって行けるかも知れない……
「高ちゃ〜んいそげ〜!」
「あっ、は〜い」
 

 
「……ここは?」
「ここは倉庫、色々な物がしまってある所ニャ」
 「例えばどんな物がしまってあるんですかね?」
「ん〜…食べ物のとか魔法の果実や芸術品など貴重な物などをしまってあるニャ」
「へ〜凄いんですね」
 
 
「誰だ……」
「えっ?」
 どっ……ドラゴン?!
「おぉ、調子はどうニャ? ブラスト?」
「まぁまぁだな、見慣れない奴も一緒だが…大丈夫なのか?」
「この子は新入りの高奈という子ニャ」
「よっ…よろしくお願いします」
「……よろしく」
 そお言うと何処かに飛び立ってしまった……
 
 
「怖かった〜…」
「あぁ見えてもブラストは優しい人何だニャ」
「ひっ……人?」
「まぁとりあえず中も案内するニャ」
「あっ、待ってくださいよ〜」
 
 
 〜倉庫の中〜
 
 
「何かちょっとだけ明るいんですね」
「みゃあね、自分も何で光ってるかはわかんニャいんだけどね」
「えっ……」
「まぁ別に気にしニャイきにしニャイ」
「はぁ……? ……あの…あれは何ですか?」
 青白く光っている布を指を指した
「アレは反物って言って皇帝に一万位で引き取ってくれる高価な物だからあんまり触らないでね」
「へっ…へ〜…凄い物なんですね……」
「お金が無くなったりすると皇帝に引き取ってもらのうニョ」
 「けどこれはどうやって作られるんですか?」
 「遺跡虫から糸を採取してそれを織ってできる物が反物ニャ」
 「この反物はいっぱい作れるんですか?」
 「うんにゃ糸からは衣や布切れが作られる可能性の方が高いのニャだからいっぱい作らないと手にはいらニャイノ」
 「本当に珍しい物なんですね…」
 「私達には何の役にも立たないけどニェ」
 「そうですね……あっ…アレは何ですか?」
 「アレはカヌーニャ、月彩村で使う物ニャ」
 「へ〜、アレに乗ると何処に行けるんですか?」
 「無人島と言う所に行けるらしいニャ」
 「無人島…ですか?」
 「無人島は元々魔王の島と呼ばれていたけど魔王が討伐された為に名前が無くなって何も無い状態になって無人状態が通り名になったのニャ」
 「でもそんな所行っても無駄なんじゃないですか?」
 「無駄じゃないニョ、その無人島には魔猫屋と言う店があって私達の食べ物等を販売しているニョ」
 「食べ物なら市場って言う所で買えば良いんじゃ無いんですか?」
 「市場は数に限りががあるけど魔猫屋って所では無限に買えるらしいニャ」
 「いったいどの位販売してるんでしょうね」
 「さあにぇ、それは私にもわかんニャい」
 「本当に色々あるんですね…」
 「まぁこの位にしてそろそろ出ようかニャ」
 「そうですね」
 
 
 
 
 ………誰? ……
 
 「……? 今…声がしませんでしたか? ニーナンさん」
 「……うんにゃ全然、気のせいじゃないニョ?」
 「………そうですね、出ましょうか」
 

 
 「ここは…酒場ですか?」
 「そうニャ、そろそろ進達も帰って来て酒場にいると思うニャ」
 「えっ…、そうなんですか?」
 「うん〜? 何か嬉しそうだニャ〜?」
 「いぇ……そんな……」
 「まぁ行くかニャ」
 「あっ…、はい」
 
 
 〜酒場〜
 
 「いらっしゃい…って、ん? おぉニーナンに高奈ちゃんじゃないかどうしたんだ?」
 「ちょっと色々と案内をしてたのニャ」
 「ご苦労さま、ニーナン」
 そお言うと俺はニーナンの頭をナデナデしてあげた
 「うに〜くすぐったい〜」
 「………」
 ――ドスッ!
 
 「グフッ……、あ……綾……鈴?」
 「何かムカついちゃったからつい…ね♪」
 ――ドタン!
 
 「あ〜進〜大丈夫〜?」
 「今日も決まったね〜綾鈴さんの毒撃が」
 「ラッキーだったな俺達は」
 「お客さん…変な事は言わないでくださいよ!」
 「はいはい、綾鈴さん♪」
 「ありゃりゃ…大丈夫かニャ?」
 「あの…ニーナンさん?」
 「うん? 何ニャ?」
 「綾鈴さんの感じが変なんですけど……」
 「あぁアレは他人の前での仕草なのニャ、よっぽど運が良いか気を許している人にしか軽い調子の仕草は見せないのニャ」
 「そうなんですか……」
 進さんの事…よっぽど信頼してるんだ……
 「私も最初はビックリしたのニャ」
 「痛たた…、今のは結構効いたぞ…綾鈴……」
 「進が悪いのよ」
 「ん〜…よく分からんよ」
 「まぁ本人はきずいてないみたいだけどニェ」
 「…鈍いんですね進さんって」
 「それもかなりのものだニャ」
 
 
 「お〜い、綾鈴さ〜んビールお願いします〜」
 「あっ! は〜い」
 「大変ですね綾鈴さんって」
 「色々とねニャ」
 
 
 「こっちは食べ物たのみま〜す」
 「ちょっと待ってくださ〜い」
 「あたた……もうちょっと手加減しろよな〜」
 「毒は大丈夫かニャ?」
 「解毒したから大丈夫だよ、あぁそうだ高奈ちゃん」
 「はっ…、はい?」
 「高奈ちゃんもやってみるかい? このお仕事」
 「えっ? 良いんですか?」
 「良いとも、君と綾鈴は気が合いそうだしね」
 (さすが進、全然空気読めて無いニャ)
「あの…、よろしくお願いします…綾鈴さん…」
「よろしくね♪」
 ――カランカラン……
 
「あっ、シナドさんこんばんわ」
「こんばんわ進君、おや? その子は?」
「あぁ高奈って言う子です」
「こんばんわ高奈ちゃん」
「あっ、こんばんわ…」
 まっ…またちゃん…
 ? この人何で左目を瞑っているんだろう?
 それに左足が何か変かも……
「あぁ、紹介するよ魔法生物学会の会長のシナドさんだ」
「シナド〜待ってよ〜」
「お? 瞳さん、いらっしゃい」
「あら、こんばんわ進さん」
「こんばんわ、瞳さん」
「シナド…何処いったんだろう……」
「おや? 由衣さん、いらっしゃい」
「えっ…あっ…いや…その……」
「シナドさんはこっちに居るよ」
 そう言ったら走ってシナドさんの影に隠れた…
 
「こらこら…由衣、動きずらいじゃないか…」
 由衣さんは頬を赤く染めながら黙ってしまった
「ん〜相変わらずの人見知りが激しいね〜俺とも少しは仲良くして欲しいな〜」
「えっ……あぁ…あの……うぅん……」
「進……? な〜にしているのかな〜?」
「え? 何?」
 ――ドスウッ!
 
「グハッ…今日…二回目……」
 ――ドサ……
 
「相変わらずだな、進君は」
「そうですね」
「あっ……それとシナドさん…他の子は……?」
「皆色々と忙しくてね、今日は来れなかったんだ」
「そっ…それはざんね…」
「まだ言うか」
 ――ドスッ!
 
「グハッ……」
 ――ドサ……
 
「あっ、死んじゃったニャ」
「別に良いのそのままで」
「それは酷いよ綾鈴ちゃん、ちょっと待って……」
「うっ……ありがとうございます…シナドさん」
「ど〜いたしまして」
「ふんっ!」
「何で怒ってんだ? お〜い綾鈴〜? …行っちまった」
「おやおや…、綾鈴ちゃんカンカンに怒ってたね」
「……何で?」
「大変だね進君」
「えぇ…まぁ」
「シナド…体に障るから帰ろっか」
「そうだな…また今度くるよ、またな進君」
「はい、お元気で」
 そう言うとシナドさんは帰って行った
 
 
「さて……後は綾鈴だな……」
「私…代わりにここの番やっておきますから行って下さい」
「えっ? 良いのかい?」
「えぇ…、だから早く行ってください」
「ありがとうな、じゃ! 行ってくるよ高奈ちゃん」
 そう言うと綾鈴が去った方向に走り去って行った
 
 
「良いのかニャ?」
「……これが良いんだと思います……きっと…」
 

 
「お〜い、綾鈴〜!」
「………」
「さっきはどうして怒ってたんだよ?」
「…………」
「黙ってちゃ何も分かんないだろ? 言ってみろよ」
「………から…」
「え? 何て?」
「嫌だったから!」
「うぉ?! どうした? そんなに大声出して…」
「嫌なの…嫌なものは嫌なの!」
「おいおい、理由を言わないと分かんないだろ?」
「……奪われたくなかったの…」
「奪われたくなかった?」
「大切な物…また失いたくなかったの……」
「大切な……物…?」
「私…昔は付き合っていた人がいたの…」
「昔?」
「そう…昔…それは…」
 
 あの日はとても暖かい日だった……
 私は何時もの様に彼と一緒にいたの……
 けど……ある日…彼は……彼は殺されたの
 彼は悪い事をしていたらしいんだけど全部私の為にやっていた事だった…
 それなのにそれなのに……
 彼は死んだの…皆私が悪いのに……
 私はその彼を殺した奴を恨んだ…
 いつの日か殺したい…八つ裂きにしたいと思っていた…
 そう思っていたその時…あなたが私の目の前に現れたの……
 
 
 
 
「……なんだ…人間…」
「君か? ここで悪さをしている魔法生物は」
「……それがどうした」
「俺はなるべくなら戦いたくない…悪さを止めて欲しいんだ」
「うるさい…人間…何をやっても私の自由だ…あっちへ行け…」
「そう言われてもね」
「どうしても行かないと言うなら……」
「言うなら?」
「……死ね」
 魔法生物が光の玉を進に向けて放った
「おっと」
 進はスキル…大盾を発動し攻撃を防いだ
「………」
「何でもそうやって拒絶するんじゃ無くて偶には受け入れた方が良いと思うけどな?」
「……黙れ人間…私の気持ちなど…分かるものか!」
 魔法生物は尚も攻撃を仕掛けてきた
 
「くっ…、分かるさ…俺にもな…」
「……私の一体何が分かると言うんだ!」
「苦しい痛い悲しい…そして…辛い…その気持ちがお前の中に渦巻いている」
「……!」
「俺は違う世界から来たせいか誰かの強い気持ちが少しだけ分かるんだ」
「うっ…うるさい! 私は苦しくも無いし痛くも無いし…悲しくも無い! そして…辛くなんか……」
「じゃあ何でそんな辛い顔をしてるんだよ」
「!! そっ…それは……」
「俺には良く分かる、胸を締め付けるほど痛い思いがな…」
「っ…!! うっ…うるさい!」
「!」
 ――ドスッ!
「っ………グッ……」
「なっ…何で…避けなかったの…? あなたなら避けられたのに…」
 魔法生物の一撃は進の腹の真ん中に当っていた…
 そして進は地面にドサッと倒れた……
「…へへ…お前の苦しみが俺を殺すだけで無くなるのならこれで良い…良いんだ…」
「何で…何で私何かの為に……」
「……さぁな……何でだろう…困ってる奴を助ける事が俺の仕事だからかな……?」
「………仕事だからって……」
「何か同じ感じがしてね……」
「えっ?」
「俺は…俺は昔彼女が交通事故で死んだんだ…」
「交通…?」
「俺の世界での事故だよ、最後に彼女が死に際にこう言ったんだ…『もし生まれ変わったらあなたにもう一度会いたいな…』って…」
「………」
「そして君がそっくりなんだ……その彼女とね……」
「私が…?」
「そう……だから出来なかったんだ………」
「……………」
「死ぬ前にもう一度会えて……良か…っ…た…………」
「えっ? ねぇ……ねぇ………いやぁぁぁーー」
 私……もう誰かが死んでいなくなるのは……もう見たくない!
 そして私が近くの蘇生治療が出来る人と怪我の治療が出来る人の所に連れて行った……
 
 
 
「……あの人…助かりますか?」
「さあな……かなりの重傷だったからな…」
「私……私……」
「大丈夫さ…、さあ…傍に言ってやりな……」
「……はい……」
 
 
 ピーィ……ピーィ…ピーィ……
 機械の音がする……
 そのあらゆる機械がその人の体に繋がれていた……
「あの……」
「ん? なんだい」
「この人の名前は……?」
「知らなかったのかい?」
「はい……」
「こいつの名は進と登録してあったよ」
「進……それがこの人の名前………」
「まぁ…助かるかはアンタしだいかもな」
「……え?」
「そいつは今死の淵をさまよっている…それをアンタが呼び戻すんだ」
「けど…どうやって……」
「ただ手を握って思えば良い、死なないでとな…俺が言えるのはそれだけだ…がんばれよ」
「…………」
 
 
 
 死なないで……進!
 
 
 
 
 ここは……?
 ……そっか俺は死んだのか……
 …………これからどうしようか……
 このまま流れに任せて光のある方向に行けば良いか……
 
 
 
 
 
 
 
 ……ないで……
 
 
 
 ? 誰だ…俺を呼ぶ奴は……
 行かせてくれよ……
 
 
 
 
 
 死なないで……死なないで…進!
 
 
 
 
 
 ………まだやり残した事があったかな……
 
 
 ……そうだ…あいつの分まで生きるって決めたんだっけ……
 ……忘れてた……このまま行けばアイツに会えるかもしれない
 けどアイツは許さないだろう………まだ生きれるのか…俺は……
 
 
 
 死なないで…進!
 
 
 
 
 ………感謝するぜ……声の主さんよ………
 
 
 
「………うっ………」
 ここは……?
 ………病院か………
 体が動かない………
 何だ……何か暖かい……これは……手?
 
 
「死な…ない…で……進……」
 ………声の主はこいつだったのか………
 ! こいつは……俺何か見捨てて行けば良かったのに…何で…
 
 
「いよう、起きたかボウズ」
「……あんたは?」
「ここの宿のオーナーだ、グッスリよく寝たもんだなぁ」
「おぃおぃ酷いな、俺は死の淵をさまよってたんだぞ」
「そこの譲ちゃんがいなかったら行っちまってたなぁ…あの世に」
「……たしかにな」
「で? 何で戻って来た?」
「………声が聞こえた……」
「ほぅ……、どんな声だい?」
「死なないで…って感じで」
「ほ〜、どうだったその声の感じは…」
「…暖かい…それだけ」
「そんだけの感想が聞ければ十分だ」
「あっ…、宿代は?」
「いや…イラねえよ、その子の思いでチャラだ」
「おっちゃん……」
「ごゆっくりな」
 
 
 
 
 
「………この世界に来て本当に良かった……」
 
 そして私が起きた時には憎しみも悲しみも辛さも……胸の痛みも無くなってたの……
 それからが毎日が楽しかった……
 笑顔が絶えなくて……偶には泣いちゃう事もあったけど…すぐに進は笑顔にしてくれた…
 でも……
 
「進は私をいらないのかと思ってないよね?!」
「………」
「私を嫌いになって何処かに行ったりしないよね!?」
「不安だったんだな……大切な人がまた何処かに行っちゃうんじゃないかって…」
「………………うん……」
「俺は何処にも行かないさ…俺はもうあんな辛い思いはもうしたくないんだ…」
「………ホントに?」
「あぁ……ホントだ…何処にもな……」
「……うっ…うっ……」
「ほら……泣くなよ……可愛い顔が台無しだぞ?」
「だっ…だって……だって……」
「大丈夫だ……俺は絶対に行ったりはしないさ…この命に代えても約束するよ」
「……うっ……うわぁぁぁん」
「うわ! ……こらこら抱きつくなよ綾鈴……動き難いだろ?」
「だって……だって〜………」
「大丈夫だよ……ほら……顔上げて………」
「何……進……?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あっ……進と綾鈴だ〜お帰り〜遅かったニャ」
「お帰りなさい、進さん綾鈴さん」
「………ただいま」
「ただいま♪」
「さあ! 仕事だ! 綾鈴がんばるぞ!」
「うん♪」
 

 
「ふ〜終わった〜」
「お疲れ〜♪」
「二人ともお疲れ様です」
「お疲れニャ〜」
「そう言えば二人で何を話していたんですか?」
「えっ…、いやぁ……その……まぁ秘密だ」
「秘密〜♪」
「何で頬が赤くなってるのかが謎ニャ」
「………何か怪しい……」
「まぁとりあえず風呂に入るか」
「賛成〜♪ お風呂〜」
「あっ…、誤魔化さないでくださいよ〜」
「誤魔化すニャ〜!」
「誤魔化してないよ! さぁ風呂だ!」
「先に行ってるね〜♪」
「ぬっ、俺が先だー!」
「駄目〜、私が先〜!」
「負けるかー!」
「私だって〜!」
 そお言うと二人はすごい勢いで行ってしまった
 
 
「本当に仲が良いんですね……嫉妬したくなる位に…」
「みゃあね…私も負けてらんニャいかも」
「えっ?」
「いいやニャンでもニャい、お風呂に行くニャよ」
「あっ、……はい!」
 
 
 
 〜銭湯〜
 
 
「ここが銭湯ニャ」
「えっ? 戦うんですか?」
「…高ちゃん…お約束をど〜もニャ」
「?」
「その戦う戦闘じゃニャくてお風呂がある銭湯ニャ」
「へ〜…? 知りませんでした」
「まぁとりあえず中に入ってから説明するニャ」
「あっ、はい分かりました」
 
 
 
 
「何か二つに分かれているんですけど…こっちですかね?」
「あ〜違う違うそっちじゃニャいそっちは男湯ニャ、女湯はこっちにニャ」
「男女別々に入るんですか? お風呂って」
「それが当たり前ニャノ」
「当たり前…ですか?」
「さあ、服を脱いでニャ」
「え?! 服を脱ぐんですか?!」
「服を脱がないと服がビショビショになって着られニャくなるから…ほら早く脱いでニャ」
「えっ? えっ? ……いやぁぁ〜〜」
 
 
 
 
 
 
「? 誰か叫ばなかったか〜? 綾鈴〜?」
「分からない〜」
「そうか…、なら良いけどな」
「そっちに行って背中でも流そうか〜♪」
「お断りしておくよ」
「ぶ〜」
 
 
 
 
 
 ――ガラガラッ……
「ん? 高奈とニーナン達も来たか」
「そっちの湯はどうかニャ〜?」
「良い感じだ〜」
「はっ…恥ずかしいんですけど………」
「高奈さんはお風呂初めてなの?」
「あっ、はい…一応…」
「そっか〜」
「さぁ、まずは湯を体にかけるニャ」
「あっ…、はい」
 ――ザパッ……
 
「あっ…熱いんですね…」
「当たり前ニャ、冷たかったら凍えちゃうニャよ?」
「たっ…確かにそうですね……」
「じゃあ入るニャよ」
「えっ……この中に…ですか?」
 ――チャプ……
 
 
「ふぅ〜…気持ちいニャ〜……」
「そろそろ私もはいろっかな♪」
 ――チャプ……
「ん〜〜、良い気持ち〜、高奈さんも入らない?」
「えっ? 私は……」
「良いから!」
 ――グイッ!
 
「え? キャッ?!」
 ――ザッパァーー! ……
 
 
 
 
「……ぷはっ、…何するんですか! 綾鈴さん!」
「とりあえず入れば良いのよ」
「入った感想はどうニャ?」
「えっ? ……何かポカポカしてきました………それと良く分かんないけど…気持ちい…」
「ふふふ、それは良かった♪」
「ニャ♪」
 
 
 
 
 
「お〜い、今の大きな音は何だ〜?」
「何でもニャいよ〜」
「? そうか〜なら良いけどな〜」
 
 
 
 
「そう言えば綾鈴さん」
「ん? なあに?」
「あの進さんが追いかけた後どうしたんですか? キゲンもすっかり直ってたし」
「え?」
「あっ、それ私も気になるニャ」
「何でも無いよ〜」
「誤魔化さないでください! 何があったんですか?」
「だから何でも無いって言ってるじゃん〜何でも無いの〜」
「何か怪しい……」
「怪しいニャ……」
「そう言えば高奈さん…」
「はい…?」
 じ〜………
 
 
 
「あの…何ジロジロ私を見ているんですか…?」
「何か育ってるな〜って思ってね」
「そっ……育ってるって…何がですか……」
「それは…これが!」
 ――ムニュ!
 
「ひゃあぁぁ! 何するんですか?!」
「な〜んか負けてるな〜て思ってね〜」
「あっ…綾鈴さんの方がおっきいですよ!」
「………私なんか論外だニャ……」
「あっ…ニーナンさん…そんなに落ち込まないで…」
「ふふふ………まあ良いニャ…サウナでも入るかニャ……」
「サウナ?」
「何か蒸し器の様な所に入るような感じニャ」
「えっ…、入ったら蒸しパンの様に……」
「ならニャいならニャい…、ていうか何でそんな事を知っているのかが不思議ニャ」
「う〜ん……何ででしょうか?」
「とりあえず行くニャよ」
「はい、そうですね」
 
 
 
 ――ブワァ……
「あっ…熱いですね………」
「熱いニャ……」
「熱いわね…」
「……何で綾鈴さんも?」
「別に入るのは自由でしょ?」
「まぁ……そうですけどサウナって何の為にあるんですか?」
「体の不純物が汗の中に溜まってるからそれを出すのがサウナだって進が言っていたニャ」
「へ〜…そうなんですか……」
「しばらくしないと汗でてこないから座りましょうか」
「そうですね」
 
 
 
 
 
 ――数十分後……
 
「あっ……汗が止まりません………」
「そろそろ出たらどうなの…? 二人とも…」
「まっ…負けないのニャ……」
 
「あっ…私も……」
「ニュ……ギ…ギブアップニャ〜…」
「ふふふ、まだまだね」
「もう……だめです……私も……」
 
 
「あっ…、そっちは……」
 
 
 ――ギイィィーー……
 
「あっ…暑かった………」
 
 
「…………え?」
「あちゃ〜」
「こっ……高…奈…? 何でこっちに……」
「えっ? ………きっ………キャァァァーー!」
「ごめんね〜進〜」
 ――ドスウッ!
 
「グフゥッ……まっ…また…?」
 ――ドサッ!
 
「大丈夫? 高奈さん」
「なっ…何でサウナが…男湯と……」
「何かこの物件ちょっと安くて買ってみたらこんな風になってたの」
「けっ…欠陥工事って事ですか……?」
「あら……良く知ってるのね、それで買ってみたらこうなっていたという訳よ安い訳はこのせいだったみたいね」
「えっ……あっ…うぅ〜ん……」
「あら? 高奈さん? ……気を失っちゃったみたいね」
 
 
 
 
 
 
 ……楽しい生活になりそうね♪
 

 
「うっ…う〜ん……」
「あら? 起きたのね高奈さん」
「あっ…綾鈴さん…? ここは……」
「皆のお家よ、気を失ったみたいだからここに運んだの」
「ありがとうございます……綾鈴さん…」
「ふふふ、どういたしまして」
「あの…、進さんは?」
「あぁ、進ならもう部屋に行ってるわよ?」
「そうですか…、迷惑かけてすみません……」
「いいのよ、元々私が説明しなかったのが悪いんだから」
「いえ…そんな…」
「それと…今日からここがあなたの部屋よ」
「あっ…ニーナンさんは…?」
「さっきまでここに居たけど疲れて部屋に行かせたわ」
「そうですか……」
「それと高ちゃんまた遊ぼうねって言っていたわよ、よっぽど好かれているのね♪」
「えっ? そうなんですか?」
「ニーナンは心の色が見えるの、その色次第で気を許すのよ」
「じゃあ…私は…」
「えぇ♪ あなたはニーナンに認められたって感じね」
「そうですか…」
 私…ニーナンさんと仲良くなってたんだ……良かった…
 
「まぁ、今日は色々あったし…今日はもう寝なさい」
「あっ、はい分かりました…おやすみなさい」
「おやすみなさい、高奈さん」
 ――ギイィィー…バタン……
 
 
 ……今日は色々な事があったな〜
 ニーナンさんと仲良くなったり…
 麻里姫さんと愛李さん零魅さん思菜さんと会ったり…
 ウィンネさんと言う人から大切な絵を頂いたり…
 シナドさんと瞳さん由衣さんと会ったり…
 ブラストさんと言うドラゴンに会ったり…
 倉庫で変な声を聞いたり…
 それと……お風呂で進さんに………はっ…はっ…裸を…みっ…見られたり…
 ……とりあえず一日で色々あったな〜
 それに色々な人と話して仲良くなったりもした…
 今日は一日が長くて楽しかったな〜…
 何か疲れて眠気が……………
 
 
 
 
 
「……寝ちゃったね…」
「そうだな……」
「あの子とは仲良くやっていけるかな? 進?」
「……やっていけるさ………さっ、俺達も寝るか」
「うん♪ …おやすみなさい…」
「……おやすみ…」
 

 
 ……うっ……眩しいな………朝か……
 ……眠い………
「ん〜…ムニュ〜……」
 …綾鈴か……ふふふ、グッスリ寝てるな……
 今日は珍しく寝相が良かったな……
「ふぁ〜………そろそろ起きるか……綾鈴〜起きろ〜」
「んにゅう〜……」
 ……まっ、いっかもうちょっと寝かせとくか
 
 
 
「……歯磨きするか……」
 そう言うと進は部屋のドアを開けて部屋を出た
 
 
 
 
 
 
 
「………迷ったか……」
 まずったな…ちょっと空間を広くしすぎたか………
 周りを見渡しても扉と階段…そしてまっすぐ伸びた廊下があるのみだった
 ………こっちに行ってみるか
 
 
 そして進が洗面台に着くのは30分後の事である……
 
 
 その頃…高奈は……
「………すぅ〜…」
 まだ寝ていた
 
 
「まだ寝ているのかニャ? えぃえぃ」
 ニーナンが高奈の頬をツンツンと突付いた
「ん〜………」
「可愛いニャ♪」
 
 
 
 ――ガチャ!
「ん?」
「ここか! …あれ? 違ったか……」
「進かニャ? どうしたニャ?」
「いや…ちょっと洗面台を探してるんだけど…ここは高奈の部屋か…」
「ニョホホ、進も何かやりに来たのかニャ?」
「何にも、じゃまた後で」
「またニャ〜」
 そう言うと進は扉をバタンと閉めた
 
 
「ん〜? どうかしたんですか〜…?」
「あっ、起きたかニャ? 高ちゃん」
「あっ、ニーナンさんおはようございます〜……」
「おはようニャ、目は覚めたかニャ?」
「はい〜…、一応〜……」
 まだ眠いのか目がとろ〜んとしている
「ん〜多少ボケが入ってるから顔洗った方が良いニャ」
「そうですね〜…」
「それじゃあ行くかニャ」
 
 
 
 
「あっ! ニーナンに洗面台まで連れて言ってって言えば良かったんじゃ………」
 あ〜…俺の馬鹿野郎〜………
 
 
 
 
「ふぁ〜〜………あれ? 進はどこ?」
 先に行っちゃったのかな?
 ん〜起こしてくれれば良かったのに〜
 ………昨日の進はちょっと大胆だったかも………ふふふ、まぁ良いか♪
 あっ…そういえば進一人で大丈夫だったかな?
 何時も家の中で迷ってるし……
 今頃どっかをさ迷ってたりして…
 
 
 
 
「ここは何処なんだ〜洗面台は何処なんだよ〜」
 ……案外当っていたりもする……
 
 
 
 
 まっ、別に良いか早く歯磨きをして朝ご飯朝ご飯〜♪
 今日の朝ご飯は何にしようかな〜♪
 目玉焼きも良いし〜…スクランブルエッグも良いかも〜♪
 ふふふ、早く作って皆で食べたいな〜♪
 
 
 
 
 〜大商店〜
 
「……んっ………朝……?」
 ………まだ眠い……
 頭がぼ〜っとする…
 けど皆起こさないと…
 
 
 
「麻里姫…麻里姫起きて……」
「ん〜もっと〜……」
 ……麻里姫…何がもっとなの?
 
 
 ……愛李を起こさないと………
「愛李…起きて……」
「む〜……ムニャムニャ……」
 ……………
 
「零魅…起きて………」
「ん〜…? な〜に? 思菜?」
「朝よ………」
「朝……分かった〜」
 そう言うと零魅は体を起こしてベットから降りて、洗面台に向かった
 
「後…二人………」
「そこそこ〜……む〜……」
「んに〜………」
 ――ブチッ
「ん〜? ブチッ?」
「二人とも起きて! もう朝よ! 起きなさい!」
「ん〜…? 思菜〜うるさい〜…」
「もうちょっと寝かせて〜」
「だめ! 私が起こさないと昼まで寝ちゃうから起きて!」
「はいはい、分かりましたよ〜起きますよ〜」
「ふぁ〜………おはよう……」
「おはよう……、やっと起きた……」
「もう思菜の声が目覚まし代わりね♪」
「………」
「進と私達以外には絶対に見せないもんねこんな事」
「……別に良いじゃない…」
「まっ、良いけどね歯を磨いて朝ご飯食べに行きましょうか?」
「そうね♪」
「賛成〜」
「……賛成…」
 
 
 
 
 
 
 〜アトリエ〜
 
「……あら? もう朝?」
 一晩中描いていたみたい…
 けどその代わり良い絵が描けたわね♪
 名は…笑顔かな…
 
 絵に描かれていたのは皆が集まって笑っている絵だった
 日が差してその絵を照らしていた
 全ての人が良い日になりますように……
 
 
「ウィンネさ〜ん」
 あら? あの声は……
「高奈ちゃん? どうしたの?」
「はぁ…はぁ…いっ…一緒に朝ご飯食べませんか?」
「朝ご飯を?」
「はい! ここ何日かアトリエにこもっているとニーナンさんから聞いたので…だから一緒に食べませんか? 皆さんと」
「そうね…あまりまともな食べ物を食べていなかったし…それじゃあ行っても良いのかしら?」
「もちろんです! さっ、行きましょう!」
「急がないの、ゆっくり行きましょう」
「あっ…、そうですね」
 
 
 
 
 
 ふふふ、本当に楽しくなりそうね♪
 
 

 
「やっ…やっと着いた……」
「あっ、進どうしたのニャ?」
「どうしたんですか? 進さん」
 そこには歯磨きをしている高奈とニーナンだった
 
 
「ちょっと迷ってな…30分位さまよっていたよ……」
「あの時に案内してくれって言ってくれれば良かったのにニャ」
「気づいた時にはニーナン達がいた部屋は分からなくなってたよ……」
「それはドンマイニャ」
「さて……俺も歯磨きするか…」
 
 
 
「今日の朝ご飯は何かニャ♪」
「ニーナンさん、ご飯は誰が作るんですか?」
「綾鈴が何時も作ってるニャ♪ それがもう絶品で美味いんだニャ♪」
「そういえばあいつは始めて作った時はすごく不味かったんだけど次に作った時は美味しかったな〜何故かは分からないけど」
「私は生まれてニャかったから分かんないけどウィンネに料理の作り方を教えてもらったって言ってたニャ」
「そうなのか? ニーナン?」
「そうにゃ、進に美味しいって言って貰えるほど死に物狂いで作り続けたらしいニャ」
「じゃあ料理の美味しさの秘密は進さんにあったんですね」
「え? 俺はただ不味いって言っただけなんだけどな?」
「………鈍いニャ、進」
「……そうですね」
「えっ? ん?」
「早く歯磨きしてリビングに来るのニャよ? 進」
「おぉ〜、分かった〜」
 そお言うと二人はドアを開けて行ってしまった
 
 
 
 
 
 その頃…家の外で不吉な影が迫っていた……
「………ここか…人間の家は…」
 
 
 
 
 
 
 
「出来た♪ ん〜美味しそう〜♪ 早く食べた〜い♪」
 目玉焼きと〜ウィンナーと〜ベーコン!
 アレが美味しかったから今日の朝ご飯はこれ!
 
 
「そう言えば進遅いな〜?」
 
 
「おっ…、良い匂いニャ♪」
「そうですね♪」
「あっ、ニーナンに高奈じゃない? 進は?」
「今歯磨きしているニャ」
 
 
「おっ、良い匂いだな」
「あっ♪ 進、おはよ〜♪」
「んっ、おはよう」
「進〜何で起こしてくれなかったの〜?」
「起こしたよ、ちゃんとな」
「もうちょっと乱暴でも良かったのに〜何で〜」
「ん〜寝顔が可愛かったから…かな?」
「えっ…」
「むっ……」
 (……何か変な空気だニャ…)
「まっ…まぁ早く食べましょうか…」
「? どうした? 頬を赤くして? 熱でもあんのか?」
 綾鈴の顔を両手で掴んで進のオデコにあてた
「ひゃ……」
 しっ……進の顔が近い〜!!!
 
 
「ん〜…何か熱がありそうだな……」
「………」
「こっ…高ちゃん…?」
 
 
「ととっ…とりあえずご飯にしましょ!」
 綾鈴はあわてて進を引き離して料理を運び始めた
 
 
「? 変なの」
「とりあえず食べましょうか?」
「ん? おぉ、そうだな食べようか」
 ――ガッッシャーーン!!
 
 
「キャーー?!」
「うぉ?! 大丈夫かよ綾鈴〜?」
「だだだ…大丈夫よ〜!」
「……かなり動揺してますね……」
「あれを私にやられたら絶対あぁなるニャ」
「ふふふ、そうね♪」
「キャ?! うぃっ…ウィンネさん?! いつからここに?!」
「進が入ってきてからよ♪ なかなかドロドロした中になってるのね♪」
「なっ?! ちがっ!!」
「まぁ確かにドロドロしてるニャ」
「ニーナンさん?!」
「それと高奈さん?」
「なっ…何ですか?」
「好きなんでしょ? 進の事?」
「えっ?! 何で知って……あっ!」
 その言葉を言った瞬間に高奈の顔が真っ赤っ赤になった
 
 
「ふふふ、やっぱりね♪ まさかとは思っていたけどね〜♪」
「いっ…言わないでくださいよ?! ウィンネさん?!」
「ん〜どうしよっかな〜?」
「ウィンネさん!?!?」
「ふふふ、大丈夫よ♪ 進には言わないわ」
「私も言わないニャ♪」
「ん? 何が?」
「あっ、進…実はニャ…」
「キャーキャー!! ニーナンさ〜ん?!」
「ムググ?! 何で口をふさ…ムググ〜」
「どうした高奈? 顔が真っ赤だぞ? どうした」
「いっ…いえ…何でもありませ〜ん!」
「いや…でも……」
「とりあえず何でも無いんです!」
「実は高ちゃんは進の事がすっ……」
「い〜や〜〜!!! 言わないでくださ〜い!」
「す? スッパイ酢の事か?」
「だからすっ…」
「い〜わ〜な〜い〜で〜!」
 
 
 
 
 
 それが20分位続いたと言う……
「……何だこの騒ぎは……まぁいい…行くか…」
 
 
 パーティーの始まりだ! 人間!
*3  ▲
 
 「そこのお嬢さん…ちょっと聞きたいのですが…」
 「ん? 何ニャ?」
 マントの男?
 ここに男はあんまりいニャいし…客かニャ?
 「ここに人間がいると聞いて来たのですが…何処にいますかね?」
 「あぁ…それは………!!」
 …何か嫌な感じ…こいつの心…人間に対する恨みでいっぱいニャ…!
 こいつ…危険ニャ!
 
 「おや? お嬢さん…きずきましたか……」
 「進に何をするつもりニャ…?」
 「それはもちろん…殺すんですよ…人間はね…」
 「!! ……そんな事…させニャい!」
 ニーナンは爪を鋭く尖らせマントの男に飛び掛った!
 
 
 「おやおや…血の気の多いお嬢さんだ…、おい…ララナノ」
 マントの男の後ろから突然影が飛び出してきた!
 
 「!」
 ――ガッ!!
 
 
 「くっ!」
 ?! 今のは一体……?!
 今の衝撃でニーナンが少し後ろに吹っ飛んだ
 ――スタ!
 空中で一回転してニーナンは地面に静かに着地した
 
 「今のは一体…」
 「さすがだな…、すばらしいスピードだララナノ…」
 「………」
 あの女の子…、爪の武器を付けてる……
 今の攻撃はアレでやったかのかニャ…
 ニーナンの頬からは少し血が出ている
 頬をグイッと手で血を拭い…立ち上がった
 
 
 「暗殺士って所かニャ? その女の子は」
 「ご名答、こいつは暗殺士は特に魔法生物達…つまり私達に有効な攻撃が出来る職業ですよ…お嬢さん?」
 「当たり所が悪ければ一発…って事もありえるニャ……」
 「まぁそんな所です…」
 こんな奴が進がいる場所に入ったら……綾鈴や進が危ないニャ……
 
 
 
 「その進と言うも者が入る場所に案内してくれたら命だけは助けますよ? 同属ですしねぇ……クックックッ」
 「そんなの死んでもお断りニャ」
 「おやおや…、それは残念です……やりなさい…ララナノ」
 「……はい」
 ――バッ!!
 
 
 ………私はここで死ぬかも知れないけど…進の事…大好きだったよ…
 「ハァァァー!」
 「………」
 
 ―――ザシュ!!
 
 
 
 
 
 
 「ッッ………?」
 何だこの感じ………
 …胸が…苦しい……
 「どうしたの? 進?」
 「嫌な感じがする……胸が締め付ける感じだ……」
 「それは気のせい……じゃないみたいだね…進」
 「あぁ…、気のせいなんかじゃない……」
 
 
 ――ボゴォォ!!
 「?! 今のは何だ!?」
 「進! あっちからだよ!」
 「行くぞ! 綾鈴!」
 「うん!」
 
 

 
 進と綾鈴が外に出ると砂煙が舞っていた…
「……なっ…何だこれは?!」
 砂煙が晴れると大地には爪で引っかいたような後があり…所々に血が飛び散っていた…
 そしてその元凶とも言えるような場所に一人…血でベットリの爪を付けた女の子とマントに身を包んだ男が入た………
 
「おやおや……やっと来ましたか……人間……」
「一体これは………!!」
 窪んだ壁には全身血だらけのニーナンがいた…
 まだ死んではいないがかなりの重症で所々に爪で引っかかれた様な爪痕があった……
 100%の確立でニーナンにこの傷を与えたのはあの女の子に間違いないだろう……
「ニーナン……、てめえか…ニーナンにこんな事をした奴は……」
「………」
 女の子は話に耳を傾けることは無くただ黙っているだけだった……
 そしてマントの男はクックックッと笑いながら進を睨みつけた
「まぁ…そういう事になりますかねぇ…?」
 こいつら……チクショウ!
 ……こんな自体が起こるなんて予想外だ…
 しかもニーナンがこんな大怪我を……くっ……
「……綾鈴…ニーナンを治療室に連れて行け……」
「えっ…でも…」
「今はニーナンの事が最優先だ……俺が足止めしておく…行け!」
「……死なないで…進…」
「わかってる…死にはしないさ………」
 綾鈴はニーナンを腕に抱えて走って行ってしまった……
 
 
「……何故綾鈴達を見逃した?」
「まぁ…追ってもあなたが止めたでしょうからねぇ……」
「………で? 何故ここに来たんだ? お前らは」
「もちろん…人間を殺す為に来ました……」
 ……魔法生物達の中には人間に酷い事をされたり同族を殺されたりして人間達を恨む奴等がいるって聞いた事があるが…本当だったのか………
 …………こいつ等に説得をしても絶対に無駄だな……
「……なら話は早いな……来いよ……」
「そこら辺の者とは違って私は死んだ人間の体はバラバラに引き裂いて捨てるのですがねぇ…」
「………今まで何人もの奴を殺めた?」
「…さぁ…何人殺めましたかねぇ…」
「………」
 こいつ…かなりの強さだな……
 俺が勝てる確立はかなり低い…
 しかもあの女の子が一緒に来るとなると…ゼロに近いな……
 
 
「クックックッ…それでは始めましょうかね……まだ手は出すなよララナノ」
「……はい」
 先手必勝だ! 食らいやがれ!
 
 
 ――ガッ!
 マントの男に待ち伏せのスキルを発動し…先手の攻撃を食らわせた!
 やったか!?
「はぁ……弱いですねぇ……この程度ですか……あなたはゴミですね」
 効いていない?!
 畜生……なら……
 
 
「おや? ひょうたんで何をするつもりなんでしょうかねぇ?」
「何かをするんだよ……あった!」
 進はひょうたんから剣を取り出した
 
 
 
「おやおや…剣ですか…それで私を殺るつもりですかね?」
「ただの剣だと思うなよ!」
 剣士の技と…流れるような技をくらえ!
 
 進は一気に間合いを詰めてマントの男に一気に間合いを詰めてマントの男にズバッ! と切り込んだ!
「…剣士技か………弱いな……」
「まだまだ! 流星剣!」
「むっ?」
 進の流れるような攻撃がマントの男に食らわせた!
 流星剣を食らったマントの男は少し後ろに吹っ飛んだ
「ほぅ…今のはスキル…流星剣…今のは良い攻撃でした…」
「なっ…今のでも駄目なのか?!」
「少し危なかったですね…ですがまだまだ力が足りませんね…次はこちらの番ですよ」
「くっ………!」
 マントの男の手にエネルギーが集まり始めた……
 
「殺るなら一瞬の方が良いでしょう…苦しまずに逝けますからねぇ…ククク…」
 くっ……ここまでか……
 
 
 
 
「さぁ! 死になさい! 人間!」
 マントの男の手からエネルギーの玉が放たれた!
 
 
 
 
 ――進!
 
 
「!!」
 ――ドゴォォーー!!
 
 
 
 
 
 
 
 
「……うっ…」
 ここは…?
 体中が痛い…まだ…生きてるの…?
 
「あっ…、ニーナン? 気がついたのね…」
「っっ…ここは…?」
「ここは治療室よ、大怪我をしていたから進が運べって言ったの…」
「まさか…進はあいつ等と戦ってるのかニャ?!」
「そうよ…私もすぐに行かないと…」
 そっか…私…全然役に立てなかったニャ…
「綾鈴…一つ気をつけて欲しいニャ…」
「何? ニーナン?」
「マントの男と一緒にいた女の子の武器…爪に気をつけてニャ…」
「…分かったわ…それとその魔法の果実を食べてね」
「分かったニャ…、それと気をつけてくれニャ…」
「うん、それじゃあ行って来るね!」
 そう言うと綾鈴は部屋を走って出て行った……
 
 
 (……気をつけてニャ……)
 
 
「綾鈴さーん!」
「高奈さん? どうしたの」
「綾鈴さん! これは一体何の騒ぎなんですか?!」
 高奈が慌てた様子で綾鈴に話しかけてきた
「高奈ちゃんはとりあえず隠れてて! 危ないから」
「まさか…進さんに何かが?!」
「大丈夫だから心配しないで」
「でっ…でも…」
「付いて来て死んだりでもしたら進が悲しむの! だからここに居て頂戴ね」
「……はい…」
「それじゃあ行くわね」
「あっ…綾鈴さん!」
「何?」
「が…がんばってください!」
 綾鈴はその返事を笑顔で返すと走って行ってしまった…
 
 
 
 ――ドオォォン!
「あっちね…」
 ――バサッバサッバサッ…
 
「一体何なんだこの騒ぎは?!」
「ブラスト…今は話しているばわいじゃないのよ」
「あっちの方で爆発が起こったんだが…誰かが戦ってるのか?!」
「爆発?! 進が危ない!」
「私も行こう!」
「ブラストは皆を安全な場所へ! 進もそう望んでるはずだわ」
「……分かった、気をつけろよ綾鈴」
 そういい残していくととブラストは飛び立って行った
 
 
「…急がないと……」
 今行くからね! 進!
 
 
 
 いた! 進だ!
 マントの男の手にエネルギーが……
 !! 進が危ない!
「さぁ! 死になさい! 人間!」
「進!」
 
 
 
 
「!!」
 ――ドゴォォン!
「進……進ーー!」
 
 

 
 
 進は爆発に巻き込まれて進のいた辺りは砂煙で全く見えなくなった……
「進…進ーー!」
「おや? お嬢さん…遅かったですね…見ての通り…彼は死にました」
「…進が死ぬはず無いわ……」
 
「見て分かりませんか? 今の一撃は私の全力です…生き残るはずがありません…」
 
 
 
 
「……生きてるぜ…マント野郎!」
 砂煙が晴れるとそこには爆風に巻き込まれたはずの進が立っていた
 
 
「進!」
「今の一撃を受け止めるとは…有り得ません………あれは…?」
 進の周りは光のオーラが進を包むように守っていた
「…なるほど…大盾ですか…今の一撃を受け止められるはずだ…」
「身を守るスキルは一通り覚えてるんだよ、祈りや見切りをな」
 マントの男はふぅっと息を吐き捨てると進に向かってこう言った
「ふむ…、君を甘く見ていたようだ…これからは本気で行きましょう…おいララナノ」
「……はい」
「奴らを殺せ」
「……了解」
 女の子は進に一気に間合いを詰めた
「早っ」
「……命令ですので…死んでください…」
「そう簡単に死ねるか」
 進の体を淡い光が包む……
 その光は進を包み込み…爪は軌道を変えて空を切った
「!」
「祈りのスキルだ…そして反撃! ウォーターマグナム!」
 水が目にも止まらぬ勢いで女の子の体を貫いた
「くっ…」
「綾鈴!」
「うん!」
 綾鈴はその女の子をブンッ! となぎ払って吹き飛ばした
 
「うぁ!」
 女の子はマントの男に向かって吹っ飛んでいった
 ――ガッ!
 マントの男は女の子の服を掴んで止めた
「全く…ララナノ…あなたには失望しましたよ……」
「……すみません」
 
 
「…覚悟しろ、マント野郎」
「ふむ…今戦えば負ける確立が跳ね上がりましたが…少し遊んでやりましょうか…」
「何…?」
「来なさい…人間」
 そう言うとマントの男と女の子は腕を構えた
 
 
「その誘い…乗ってやる、行くぞ! 綾鈴!」
「うん! 迸る雷撃!」
 綾鈴は雷撃をマントの男に向けて放った!
 
 
 ――バシンッ!
 雷撃がマントの男に直撃した!
「ふむ…まあまあだな…」
「効かねえか……接近戦で行くぞ! 綾鈴はあの女の子の爪に気をつけろ!」
「うん!」
 そう言うと進と綾鈴はマントの男に向かって走り始めた
 
 
「良い選択だ…ララナノ」
「…はい」
「行くぞ……」
「はい」
 そお言うとマントの男と女の子が向かってきた
 
 
「来るぞ!」
「はあぁぁぁ!」
 綾鈴はマントの男に殴りかかった!
 
 
「まだまだ甘い…」
 綾鈴の攻撃は簡単に受け流されてしまった
「くっ…」
「攻撃した後の動きは隙が大きいのを覚えておくと良いですよ…お嬢さん?」
 ――ドガッ!
 拳を受け流した後にマントの男は綾鈴の腹にパンチを食らわせた
 
 
「ぐっ…!」
「次だ」
 パンチを食らわせた後、マントの男は綾鈴を魔法で吹き飛ばした
「キャ!」
「綾鈴! うぉ!?」
 綾鈴は進に向かって吹き飛んだため進にぶつかってしまった
「綾鈴、大丈夫か?!」
「うん! すぐに反撃しないと」
 
 
 ――ザッ!
「……甘いです…」
「知るか!」
 ――ガァン!
 光の盾が進達を女の子の攻撃から防いだ
 
 
「……大盾か…」
「ご名答、行け! ウォーターマグナム!」
「迸る雷撃!」
 二つの魔法が合わさり、女の子にぶつかった!
 
「くぁ………! まだ……」
 そお言っている女の子だったが足は振るえ…体が言うことをきかない状態に陥っていた
「……もう限界ですか…仕方ない…引きますかね、来いララナノ」
「くぅっ……はい」
 女の子は倒れている体を起こしてマントの男の場所に瞬時に移動した
 
「逃げんのか?」
「まぁ……そおいう事になりますかね…残念ながら……」
「あんた一人で俺達何て倒せるだろうに…何故逃げる?」
「私がやると面白くないからです…、このララナノがやるのを見てると面白いですから…」
「……面白いか…こんな嫌な事その子にか?」
「そんなの事は関係ありませんよ、私の命令だけを聞けばそれだけで良いのです」
「……てめぇ…、本当にクソ野郎だな…」
「ふふふ、褒め言葉をありがとう…それと私の名はレイン・ジグラン…覚えておくと良いでしょう…また会いましょう…人間……」
 マントの男は女の子と共に光に包まれて消えてしまった……
 
 
「ゲートか…あの魔法をいとも簡単に……」
「……進…またあいつ来るのかな…」
「来るだろうな…色々と対策を練らないとな…それよりニーナンが心配だ…」
「ニーナンは大丈夫、魔法生物だから助かったようなものだって京菜が言ってた…」
「そうか…無事だったか…良かった…」
「これからどうしよう、進?」
「そうだな…まずは後片付けだな、他の皆を呼んで片付けようか」
「そうだね、じゃあ始めましょ♪」
「よっしゃ! 頑張らないとな!」
 そお言うと二人は二手に分かれて後片付けの準備を始めた
 
 
 
 
 
 
「……良かったのですか? レイン様」
「良いのですよ、暇な毎日を過ごすよりかはマシです」
「…そうですか」
 あの進という男…何故敵の私の心配など……
 変な奴だ……
「お前が疑問を抱くなど持ってのほかですよ、そお言うのは黙っていなさい」
「……はい」
 ふふふ、これで暇な毎日を過ごさずにすみそうだな……
 私が来るまで完全に死ぬのではないぞ…人間……ククククク……
 
 

 
 あのマントの男襲撃事件が起こって3日たった……
 俺と綾鈴は少し片付けをした後は大怪我を負ったニーナンに会いに行った
 幸い古代の実やキャルの果実等を食べればニーナンの怪我は自然と治っていくと言っていた……
 それとブラストは皆を誘導してちゃんと避難していたそうだ
 幸いあの程度の被害で済んだのが奇跡だと帝國の軍人の人達が言っていた
 あのレイン・ジグランと言う男は魔法生物の中でもかなりの腕だったらしい
 色々な場所で人間を殺していてほぼ復帰不可能というほどズタズタに引き裂いて去っていくのだと言う…
 たしかに奇跡だった…
 ニーナンも死なずに済んだし…俺も肋骨が2.3本折れただけで済んだ…
 それと綾鈴は軽い打撲で済んでいたらしい
 今は色々とあって怪我や骨折も完治して後片付けも終わった
 そして俺は今トレーニング中だ
 あの男…レイン・ジグランが何時でも来ても良いように体を鍛えている
 皆を守るために……
 
「隙あり!」
 ――スパァン!
 進の頭に竹刀による一撃がヒットした
 
「痛っ!?」
 
 
 ――ドサッ!
「まだまだ駄目な、進」
「いたた…もう一回! ちょっと考え事してたから今度はちゃんとやるよ」
「本当か?」
「大丈夫だ、本気でやるよ」
 もうあんな事になりたくないからな……
「……じゃあ行くぞ」
 二人は竹刀を構えた…
 
 
「…行くぞ! 刀子!」
「来いっ!」
 
 
 ――スパァン!
 
 
 
 
 
「そういえば進さんはどうしたのでしょうか?」
「たしか…、新しく建てた道場に行ってるわよ体を鍛えるとか言って」
「そうですか……」
 ……私…あの時何も出来なかった……
 …心配する事だけしか出来なかった…
 ただ待っている事しか…
 
「……高奈さん……どうしたの?」
 高奈は少し泣いていた…
「…強くなりたいと思って…」
「強く?」
「私も綾鈴さんの様に強くなりたいなぁって思って…けど無理ですよね…綾鈴さんみたいに強くは…」
 高奈は手をギュッと握り締めた
 
 
「……きっとなれるわよ、私みたいにね」
「…本当ですか?」
「うん♪ なれるわよ、きっとね♪」
「……はい!」
「さぁて、今日のご飯は何にしようかな〜」
 昨日は野菜とかサッパリした物ばっかりだったし……
 何を作ろうかな…
 
「あっ、ハンバーグとかはどうですか?」
「うん良いね♪ じゃあ作ろっか♪ え〜と…お肉は…」
 
 
 
「………はい」
 思菜が行き成り綾鈴と高奈の後ろに現れた
 
 
「えっ?! 何時の間に…」
 思菜が綾鈴に渡したのは狩りをして手に入れた森の動物だった
「ありがとう♪ 思菜♪」
 そう言うと綾鈴は思菜の頭を撫でた
「………それじゃあ」
 思菜は頬を赤く染めながらドアを開けて行ってしまった
 
 
「材料も揃ったし…作ろうか♪」
「はい♪」
 
 
 
 ――シュッ…シュッ…シュッ……カタン
「ふう…、出来たわ……」
 題名は…バレンタインかしらね
 良い感じに出来たかな?
 
「入るニャよ、ウィンネ〜」
「どうぞー」
 ――ガチャ
 
 
「久しぶりニャ、ウィンネ」
 そこには頭や腕などに包帯を巻いているニーナンだった
「あらあら…、まだ包帯取れてないけど…大丈夫なの?」
「京菜が少しだけなら良いって言ったニャ♪」
「そうなの? なら良いんだけど」
「それは絵かニャ? チョコを渡している様子がうかがえるケニョ」
「バレンタインって言う名前の絵よ、評価は…89点位ね」
 何かが足りない…何かしら…?
 
 
「バレンタインか〜…、私も渡してみたいニャ」
「じゃあ…これから作る?」
「けど何が必要なのニャ?」
「ハート型の形とチョコレートよ、じゃあ倉庫に行ってチョコを取りに行って作りましょうか」
「そうだニャ、じゃあ行くかニャ♪」
 そお言うと二人はアトリエを後にした……
 
 
 
 
 
「……暇だな」
 今日も異常無しか……
 ……私がいながらあの様な事態に……くっ…
「……ブラスト」
 
「ん? あぁ…思菜か…どうした?」
「…今日は沈んでると思って…」
「…三日前の事を思い出してな」
 
 
 
「……落ち込まないで…」
「ありがとう、心配してくれて…ありがとよ」
「……また…ね」
 そういい残すと小走りで行ってしまった
 
 
 さて…、警護を始めるか…
 そう思うとブラストは空に飛び立って至った……
 
 
 
 
 
 
「出来た!」
「美味しそうですね♪」
 お皿の上にはジュウジュウと音をたてて肉汁が溢れ出ているハンバーグだった
「ん〜♪ 美味しそ〜♪」
 ――ガチャ
 
 
「あっ、ニーナンさんにウィンネさんどうしたんですか?」
 二人は手にいっぱいのチョコレートを持っていた
「バレンタインのチョコを作ろうと思ってここに来たのよ」
「材料も持ってきているし…一緒にどうニャ?」
「チョコか〜、私も久しぶりに作ろうと思ってたのよ」
「久しぶり? 前には誰に作っていたんですか?」
「…誰でも良いの、ご飯も出来たし作りましょうか♪」
 今一瞬暗い顔をした様な…?
 まぁ…別に良いかな?
 
 
「じゃあチョコ作り開始!」
「はい!」
「お〜♪」
「ふふふ、腕が鳴るわ♪」
「がんばって作るニャ♪」
「あっ、他の女の子の皆さんも呼んだほうが良いんじゃ?」
「そうね…、他の子はあんまり進に会う機会が無いし…それが良いわね」
「じゃあ呼んでくるニャ」
「あっ、私も行きます!」
 
 
 女性陣は元気にチョコ作りを開始した
 
 
 
 ――カラン…カラン…
「……引き分けか…」
「そうみたいだな、やっぱり刀子にはかなわないな〜」
「そうかな? あと一歩踏み込めば竹刀を弾いて一本を取れただろうに」
「へ〜そうなのか?」
「来た時より剣術も良くなったしな、確実に強くなってるよ」
「そっ…そうか? 照れるな…」
 そう言うと進は頬を赤く染めた…
 
「調子に乗って腕を鈍らせるんじゃないぞ?」
「分かってるよその位はな、俺はもうちょっと鍛錬しとくから先に飯を食べててくれないか?」
「えっ? あぁ、なら先に行ってるからな」
「後で行くからな〜」
 ――ギイィィ…バタン…
 
 
 最近の進は鍛錬に打ち込んでいるな……
 ……三日前の出来事から鍛錬に打ち込むようになったし……
 体を強くするだけでは奴には勝てんぞ……
 心・技・体の三つが揃ってこそ真の強さを発揮するものだ…
 ……進はその事を分かっているのだろうか……
 まぁそれは自分で身に着けないと鍛錬にならんしな…
 見守るか…彼を…
 
 
 
 
 
 
 進は木刀を手に持ち…技の練習や素振りを始めた…
 待ってろ……レイン・ジグラン…
 必ずお前より強くなってみせる…!
 
 
*4  ▲
 
一方その頃…女性陣がいるキッチンでは甘〜い匂いが漂っていた…
「まずはチョコを溶かして……キャッ?!」
「高ちゃ〜ん、何やってるのニャ? チョコ塗れニャよ?」
 いたたっと言いながら高奈はチョコ塗れになった顔を布巾で拭っていた
 
 
「そう言えば…他の皆はどうしたのかしら?」
「いたたた…、えと…それなら皆さんもう個人で作ってました」
「うんうん、とっても美味しそうだったニャ」
「ん〜…ならもっと凄いのを作らなきゃな〜」
「そうねぇ…何にしましょうか……」
 綾鈴達はむ〜…と言いながら頭を悩ませていた
 
 
 ――ガチャ
「おっ? どうしたお前達?」
「あ、刀子お帰りニャ」
「ただいま、むっ? ハンバーグか…美味しそうだな」
「あっ、刀子お帰りニャ」
「ん? そいつは誰だ?」
「あっ…私、高奈って言います」
「そうか、高奈と言うのかよろしく」
「よっ…、よろしくお願いします…」
 何か男っぽい人だなぁ……
 
 
「ふふ、私は男らしくしているのでなそう思っても構わんよ」
「え…」
「刀子はその人の動きとか行動で何を思っているのかを大体分かるから注意ニャ」
「ちゃんと修行をやれば誰でも出来るようになるさ、君もどうだ?」
「修行ですか…?」
「うむ、君は闘いの才能があるかも知れない…その才能を私なら引き出せるのだが…どうかな?」
「……」
 才能…、私にそんな物があるのかな…
 
 
 
「まぁ…、無理にとは言わないがな」
「…私なんかが強くなれるんですか?」
「君でも…誰でも強くなれるんだよ? 修行次第で君も強くなれるさ」
「本当…ですか?」
「あぁ、綾鈴もそうだったからな」
「綾鈴さんも?」
 刀子はコクリと頷いてニッコリ笑った
 
「そう、綾鈴も最初は今の君の様に弱かったが修行をして強くなったんだ」
「……私も強く…綾鈴さんみたいに強くなれますか?」
「なれるよ、ちゃんと修行をがんばればな」
「…はい!」
 
 
「そう言えば刀子はチョコ作ったの?」
「もちろん作ったが…それがどうかしたのか?」
「どっ…どんなのニャ?」
「うむ…こうゆうのはあまり知らないからふつーの形のチョコと言う物を作ったが…それがどうかしたのか?」
「形は…?」
 綾鈴達は食い入るように刀子に聞いた
 
「たしか……心という物だったような…」
 心…つまりハートかな?
 
 
「お前達は作ったのか? チョコと言う物を」
「私達はこれからなのよ」
「何を作ろうか迷っているんです」
 ふむ…と刀子は考えた
 
「とりあえず材料はあるのだから…とりあえず作れば良いんじゃないか?」
「ん〜…、そうね作りましょうか」
「形はどうするニャ?」
「もちろんハート型ね」
「それも心のこもったものをね♪」
「進に美味しいって言ってもらえるかしら?」
 
 
「それは進次第ね…、そう言えば進はどうしたのかニャ?」
「そうね…、ここ2日間見てないし…」
 
 
「あぁ、進なら道場で修業に励んでおるぞ」
「進が何かに打ち込むなんて珍しいわね」
「そうだニャ〜、いつも大体は途中で止めちゃうかやらないかの二つ出しニェ」
「……三日前からだよね…進がちょっと変わったの…」
「そうね…、進の真剣な顔見るのは初めてだったわ」
「きっと疲れてるかもね、道場にこもって…」
 
 
 よし! と高奈が声を上げた
「どうしたニャ? 高ちゃん」
「皆さんで進さんが元気のでるチョコを作りましょう!」
「うんそれが良いわね♪疲れている進の心を癒す様なチョコを作りましょうか♪」
「なら始めましょうか!」
「作るニャ〜!」
 
 
 
 元気な声を上げて綾鈴達はチョコを作り始めた
 
 
「味は……辛ッ! 砂糖と塩間違えちゃった!」
「…ベタニャ…、高ちゃん」
「ふふふ、本当ね」
 二人は小さくクスクスと笑った
 
 
「あ〜う〜、笑わないでくださいよ〜」
「ほら! 急がないと進が帰ってくるかもしれないから早くして!」
 
 
「…ふふ、高奈と言う子が来てから余計騒がしくなったのぅ」
「本当ですね刀子さん」
 話し掛けてきたのは少し透明で宙に浮いている女の子だった
 
 
「む…? お前か…、この前除霊してやったのに…また来たのか?」
「あの位じゃ成仏しませんよ♪刀子さん♪」
「むぅ…、時間が掛かりそうじゃのぅ」
「ふふふ、私は簡単にはくたばりませんからよろしくお願いします♪」
「……変な者に好かれてしまったのぅ」
 そう言うと刀子は小さなため息を漏らした
 
 
「おっ、おいしそうニャ♪」
 ――パクッ!
 高奈が作っていたチョコをニーナンが少しかじった
「あっ! ニーナンさん食べないで下さいー!」
「ん〜おいしいニャ♪これなら進が喜んでくれるかもニャ♪」
「えっ…って誤魔化さないで下さいニーナンさん〜!」
「そこ何やってるの〜、早く作りなさいよ〜!」
 
 
 
「ふふふ、皆楽しそうね♪」
 もしかして…あの絵に足りなかったのは楽しさかしら?
 あの子達には色々と気づかされるわね…
 帰ったら続きを描かないとね♪
 
 
「チョコが出来たらご飯を食べてから寝なさいね」
 
 
 
「は〜い」
 綾鈴や高奈、ニーナン達はそう言うとチョコ作りに没頭し始めた
 
 
 
 「ここはこうで…ん〜違うニャ〜」
 「文字が間違ってますよニーナンさん? 変?」
 「あっ…本当だニャ」
 「ふぅ、出来た」
 「おっ…、大きいんですね…」
 「デカイニャ〜」
 綾鈴が作ったチョコは両手いっぱいに持たないといけないほどデカイ物だった
 
 
「私はアトリエに戻って続きを描くから、皆がんばってね」
「お疲れ様です、ウィンネさん」
「がんばってニャ〜」
「体に気をつけてね、ウィンネ」
 
「ありがとう皆♪またね」
 ウィンネはニコッと笑うと調理場を後にした
 
 
「さて…、なら仕上げに掛かりましょうか♪」
「はい♪」
「ニャ♪」
 
 
 
 
 
「ふぅ…、今日は疲れたな…」
 手には豆が出来てるし…手の震えが収まらないし
 けどこんな事で根を上げていては駄目だな……
 あいつに追いつく為に…そして皆を守る力が…
 ん…? 良い匂いだな…
 
 
「ハンバーグ? 綾鈴が作ったのか…ん? 紙?」
 え〜と…これを食べて元気を出して♪ 綾鈴より
 ……ありがとう…綾鈴
 
 
 
「…相変わらず美味いなぁ」
 また料理の腕を上げたな綾鈴の奴…
 がんばろうかな…
 
 
 
 進は綾鈴の作ったハンバーグを食べ終わって自分の部屋に向かっていた
「おっ、今日は珍しく早く見つかったな」
 眠…ベットは…
 何だこれ…、ん? これは…チョコか?
 ……そういや今日はバレンタインだったな…すっかり忘れてた
 ん? チョコと一緒に手紙が?
 え〜…修行も良いが熱中しすぎて他の事が見えなくならない様に気をつけるが良い  刀子より
 ん? この小さいのはニーナン?
 偶には皆で遊ぼうニャ! ニーナンより
 こっちは高そうだな…体に気をつけてね ウィンネより
 こっちのデカイのは…がんばって作ったチョコケーキ食べてね♪ 思菜 麻里姫 愛李 零魅より
 こっちは…チョコを食べて元気出してくださいね  高奈より
 こ…このデカイハート型のチョコは…綾鈴か…
 皆で進を励まそうと作ったチョコを作たのよ♪修行も程々にね♪
 他にもまだあるけど…今夜中に読めそうに無いな…
 ……俺…皆に結構心配されてるんだなぁ…
 ごめんな…皆に心配かけて…
「…修行もこれから程々にするか……」
 
 
 
 
 
 
 今日は寝るか……ありがとう…皆…
 
 
 
 
 
 

 
 う〜む…、昨日の修行の反動が今日になって来たか…
 手やら足やら体中が痛いな…
「痛たた…、皆おはよ〜」
 進は少し体を抑えながら皆に挨拶をした
 
 
 
「む? おはよう、どうしたのだ進?」
 体を抑えて入って来た進を心配して刀子が聞いた
 
「ちょっと筋肉痛だよ…、昨日の稽古の反動が今頃になって出てきたみたいだ…痛ッッ…」
 進は少し痛そうに腕などを押さえた
 俺が居た世界ではろくに運動も何もしてなかったからなぁ…
 
 
「むぅ…、アレくらいで情けないのぅ…」
 刀子は小さく溜息をついた
 まぁ…無理も無かろうな…
 あのジグランという男と戦った後に修行を始めたのだからのぅ
 努力すればなかなか良い線まで行けるのじゃがヤル気がまるで無い…
 あの男と戦ったのが良い方向に行ったのかのぅ…
 
 
「しばらくは討伐やら闘技場とかで体を鍛えるつもりだけどな」
「がんばってくださいね進さん」
 高奈は進を元気ずける様に言った
 
 
「ありがとな、高奈♪」
 進はその返事を笑顔で返した
 
 
「あっ…、いぇ……」
 その返事と笑顔に高奈は頬を赤く染めた
 
 
「……」
「ん? どうしたニャ綾鈴? 何か怖いニャ」
「何にも〜」
 そう言うと綾鈴は何事も無かったように食事作りを再開した
 
 
 
「頑張るのは良いとして…勝てるのか? 他の者に」
「最近は少し強くなったしな、偶に勝てるようになったさ」
 本当に偶にだけど…
 
 
「私から見ればまだまだ修行が足りぬがな」
「む〜…、何時も厳しいな〜刀子は」
「そう言えばこの前のトーナメントどうだったの? 静和寺院杯の結果は?」
「ん? あぁ、優勝したよ結構きつかったけどな」
「ほ〜、やるではないか」
「そっ…、それは本当ニャ?」
 ニーナンはかなり驚いた様子で進に言った
 
 
「本当だけど? まぁシナドさんや上級者の冒険者さん達がいなかったから勝てたようなものだけどな〜」
「けど凄いニャ! 何時も一回戦落ちが多かったし…優勝できた事自体が奇跡ニャ!」
「まあな…、素手で戦ったから勝てたようなものだったしな」
「やはり武器を使いこなしてこそ真に強いと言えるのだのぅ」
「武器は実戦ではあんまり使わないしなぁ…ほとんど皆に頼りっぱなしだよ」
「別に頼っても良いんですよ進さん」
「うむ、何時でも私達は力になるぞ」
「何時でも力になるニャ♪」
「私達は家族なんだから頼っても良いのよ? 進♪」
 
 
 …俺も良い奴らに好かれたもんだな
「まっ、それもそうだな皆に頼る事にするよ」
「だが少しは剣術をもうちょっと磨いてほしいのぅ」
「進が剣を持ったら弱いニャ〜」
「そこは言わないでくれ…」
「けど最近は頑張ってるから良いんじゃないの?」
「はい♪最近はとっても頼りがいがありますし」
「…綾鈴〜飯食ったらすぐに依頼受けに行くぞー」
「は〜い」
「あっ、照れてるニャ」
「…照れてるのぅ」
 
 
「うっ…、うっさい!」
 
 
 今日も色々と起こりそうだ…
 ……そう言えばあっちの世界の皆は元気だろうか…
 …まっ、別に良いか
 俺はこっちの世界で生きるって決めたんだからな
 
 
 
 
 
「もう出来るよ〜」
「お〜ぅ分かった〜」
 
 

 
 
 ん〜今日もいい天気だ
 ふぁ…眠…ん? 手紙?
 おっ、シナドさんからだ…
 
 
 え〜何々…三月三日魔法生物学会正式会員ひな祭りイベント?
 自分の魔法生物についてコメントを頂きたいと…
 ふ〜む…どうするかな…
「どうしたニャ進?」
 
 
 話し掛けてきたのは巫女服を着ている獣人型の魔法生物だった
 その魔法生物は進が持っている手紙に興味があるのか、何々? という感じで近づいて来た
 
 
「ん? ニーナンか、学会のイベントについての手紙だよ」
「どんなイベントなのかニャ?」
 ニーナンは手紙を見ようと顔を進の方にくっついてきた
 
 
「こらこらそんなにくっつくなよ、見たいならどうぞ」
 そう言うと進はニーナンに手紙を渡した
 
「ありがとニャ♪」
 手紙を受け取ったニーナンは軽く手紙に目を通した
「何を書こうか迷っててさ、何を書けば良いと思う?」
 
 
「…書く事が無いのなら皆の性格とかを書けば良いんじゃないのかニャ?」
「性格か…それが良いな、それにしようか」
 
 
「…相変わらず進は考えないで行動するのニャ」
「そうなのか? 俺って」
「…それはともかく取りあえず書かないとニェ」
「そうだな…なら書くか!」
 進は張り切りながら自分の部屋に向かった
 
 
 
 …大丈夫かニャ?
 今日は眠いニャ…何処かで日向ぼっこでもしようかニャ…
 そう思ったニーナンは日当たりの良い場所を探し始めた
 
 
 
 
 〜進の寝室〜
 
 
 さて…まず誰から書こうか…
 そうだ、綾鈴から書いて行こうかな
 そう進が思うと机の鉛筆を手に取った
 
 
 綾鈴の性格は表面は明るく、元気に振舞っているが実は内面は寂しがり屋
 料理の腕は抜群だがかなりの大食い
 最近では抑えるようになってきている
 綾鈴は過去に深い心の傷を負って少し人間を恨んでいた事があった
 だが最近では心の傷が無くなって来て俺以外の人とも付き合えるようになって来た
 それと最近は俺が他の女の子と話すと毒撃をしてくる
 …ちょっと怖い面もあるがとても良い子です
 
 
 …こんな感じかな?
「な〜に書いてるのかな〜進〜?」
 行き成り現れた黒い修道院服を身に包んだ女の子が現れた
 
 
「うおぅ! なっ…何だ綾鈴か…」
「な〜に? 何だかスッゴイ驚いてるようだけど?」
「いやいやいや、何でも無い、何でも無いんだよ?」
 明らかに何かを隠してるわね…
 …別に良いか、悪い隠し事じゃなければね
 
 
 
「ふ〜ん、…悪い隠し事じゃないよね?」
「悪い隠し事ではないと言い切れる!」
「そこまで言い切れるのなら良いけど…、偶には私以外の子にも構って上げてね? それじゃあ頑張ってね♪」
 そう言うと綾鈴は手を振りながら部屋を出て行った
 
 
 
 …そう言えば他の子達にはここの家とかでしか会わないな…
 それに俺は綾鈴の事しか余り知らないな…
 ……偶には依頼とかを削って皆との時間を作らないとなぁ
 よし! これから週に一度、皆で広間に集まって雑魚寝する日を作ろうかな!
 綾鈴には何時も何かを気づかされるな…
 後で綾鈴に何かプレゼントでも贈るか
 
 
 そう思った進は鉛筆をペン入れに戻して部屋を後にした…
 
 

 
 
「さて…今日は何をするかな…」
 最近は依頼ばかりで皆にかまってないし…
 今日は依頼はしないでおこうかな…
 そう思った進は皆と何をしようかと悩んでいた
 
 
 
 ――ツンツン…
 黒い影の様な物体が進の体を突付いた
「ん? おぉ、リンか一体どうした?」
 黒い影のリンはノートを取り出してサラサラと文字を書いて進に見せた
 
 
「え〜と、精霊の法術で姿を変えたいだって? 一体どうしてなんだ?」
 またリンはノートにサラサラと文字を書いて進に見せた
 
 
「私も綾鈴達の様に喋りたい? う〜ん、あれは貴重な物だしな…」
 リンは怒った様に進をバシバシと叩き始めた
 
 
「こらこらやめなさい、分かったからやめなさいって今から準備をしてくるから」
 それを聞いたリンはピタッと叩くのを止めた
 
「結構貴重で今の所倉庫に二つしかないんだからな、とりあえず城型の倉庫の前で待ってなさい」
 リンはコクリとうなずいて走り去っていった
 
 
「は〜…、まぁ…悩んでいてもしょうがないし…準備を始めるか」
 そういうと進は頭をポリポリと掻きながら倉庫に向かった
 
 
 
 〜倉庫前〜
 
 
 後はナンバーを選ぶだけだな…
「リン、その陣の中に入ってくれ」
 リンはコクリとうなずくと進の言ったとうりに魔方陣の中に入った
 
 
「これから何が始まるのニャ?」
 魔方陣の周りに他の住人達がゾロゾロと集まって来た
 
「色々だよ、離れてくれよ皆〜キケンだからな〜」
「一体何が始まるんでしょうね?」
「お楽しみだよ、さあナンバーを選んでくれリン」
 リンは少し迷ってナンバーを選んだ
 
 
「110番か…よし始めるぞ」
 進が魔方陣に手を当てると魔法陣が光を放ち始めた
 
 
「すごいわね…、かなり高等な魔方陣…まさか精霊の法術?」
「精霊の法術? それは一体…」
「精霊の法術とはその者の姿形を変える魔方陣じゃよ」
「姿形を…変える?」
「うむ、リンは昔から喋れなかったせいで色々と苦労していたらしいがそれを進に頼んで喋れるようになりたいとノートに書いておったのぅ…」
「けど何で進さんがそんなに貴重な物を?」
「進は貴重な物を集めるのが趣味だから色々とレア品は持っているらしいから」
「精霊の法術は大会で優勝しないと手に入らない物だから交代してもらったって話しらしいのう」
「それにレア専用の倉庫まで作って保存しているからかなりのコレクターね」
「そんなに…、あっ何か始まるみたいですよ」
 
 
 魔方陣が少しずつ光り始めてリンの周りが光に包まれていく…
 「凄い魔力ニャ〜、こおいうのはよくわかんにゃいのだけど凄いニャ」
「魔力がこの場所に集まり始めたわね」
「始まるみたいだのぅ」
 
 
 (私はこれで喋れる様になるのかな…)
 リンは心の中でそう思い心の準備を整えた
 
 
 
「…よし法術の準備が整ったし…始めるか」
 進はスーッと深く深呼吸をして魔法陣に近づいた
 
『我が命により…この魔法生物を確認110番の姿に変えよ!』
 進が言葉を発した時リンの体が目を開けていられないほど眩い光に包まれた
 そして光はすぐに消えてしまった
 
 
「…成功か?」
 目が少しチカチカしているせいでその場に居る皆がリンの姿が良く見えないらしい
 
 
「…あーいーうー、凄い…私…私喋れてる!」
「どうやら成功したみたいじゃな」
 やっと目が見えるようになって皆がリンの姿を改めて見て見た
 
 
「うわぁ…、天使ですか? とっても綺麗です…」
「お〜羽があるニャ!」
「綺麗よ、リン♪」
 
 
 
「そしてどうだ? 喋れる気分は?」
「とっても嬉しい! 進…ありがとう!」
 そう言うとリンは進に抱きついた
 
 
「うわ?! こらこら…離れなさい!」
「嫌です!」
「……」
 
 
「…何か嫌な予感が…」
 ぬっ! と綾鈴が進の目の前に立って居た
「大当たり」
 ――ドスッ!
 
 
「グフゥッ…ま…また毒撃?」
 進はそれを言い残した後ドサッ! と倒れこんだ
 
 
「あぁ! 進大丈夫?!」
「大丈夫よ、すぐに立ち上がるから」
「むっ、ちょっと酷いです綾鈴さん」
「少しね大丈夫だから良いのよ」
「良くありません! 私が成敗します!」
「良いの? 私は強いわよ?」
「魔法なら負けませんよ!」
「ふふふ、ならいざ尋常に勝負!」
 綾鈴がそう言った瞬間二人の戦いが始まった
 
 
「あああ…、私…止めに行きます!」
「高奈別に良いのじゃよあれでな」
「でも…」
「おーいてて…、何やってるんだあの二人は?」
「…」
「俺のせいなのか、やれやれ…なら止めに行きますか…」
 間接をポキポキ言わせながら準備運動を始めた
 
 
「はぁぁぁ!」
「うりゃ!」
 ――ドゴーーン!
 
 
 
「危ないですよ進さん!」
「何…心配するな、進は強い」
「でも…さっき綾鈴さんに一撃で…」
「まあ見ておれ、おぉ…始めるつもりじゃな」
 
 
『…まどろむ湖蛇!』
 進が魔法を唱えると二匹の大蛇が地面に出てきた魔法陣から現れた
 
 
「よ〜し、あの二人を抑えてくれないか?」
 大蛇はコクリと頷いて二匹は二人を押さえにかかった
 
 
「なっ…何?!」
「キャーー!」
 二匹の大蛇はがっちりと二人を押さえ込んだ
 
 
「ケンカは駄目だと何時も言ってるだろう?」
「…は〜い」
「…はい…」
「それで良し」
 進は二人にニッコリ微笑んだ
 
 
「凄い…、あんな強い綾鈴さんとリンさんを一瞬で…」
「うむなかなかの腕前じゃな、昔はもやしだったのにのぅ」
「そう言うなよ刀子、近日春の天下一武道会があるからそれに迎えて鍛えてるからな」
「まぁ、上々だとでも言っておこうかの」
「はいはい、刀子は厳しいな」
 
 
「ね〜進〜そろそろこの蛇どうにかしてくれないかな…」
「助けてくださいー!」
 
 
「しばらくはそのままだよ、ちっとは反省しときなさい」
 
 
「え〜ん」
「そんな〜」
 
 
「ははは、後で来る時まで頭冷やしとけよ」
 やれやれ…この子達と一緒に居るとハプニングばっかりだな…
 まぁ退屈せずにすむから良いんだけど♪
 また何かが起こるかもな
 
 
*5  ▲
 
「天下一武道会春が終わりましたね」
「そう言えば進はどこまで行ったのかニャ?」
 
「ん?あぁ…、三回戦かな?」
 そこに居た皆はほお〜とかおぉ〜という感じで驚いた
 
 
「…何だその驚き方は…」
「だって進がそこまで行けているとは思わなかったしニェ」
「おいおい…それは無いんじゃないのか…」
 ちょっとガックリと落ち込む様子の進だった
 
 そこに刀子がこらこらといいながら話に入って来た
「じゃが三回戦まで行ったのは事実、昔よりは強くなったという事なのかのぅ」
「進もす・こ・し・は頑張ってる事だからね、けどまだ強い人も居るんだから頑張ってね?」
 ちょっと辛口な綾鈴の発言に進は頑張りますよ〜と言いながら部屋を出て行った
 
 
 高奈があっ! と思い出すように綾鈴に話しかけた
「そう言えば…リンさんは?」
 あぁ…あの子ね…とため息を吐くように答え始めた
「リンなら新しい体の感覚を掴むためにそこら辺を飛んでくるって言ってたわよ?…何か強くなって来る! とか言ってたわね…」
「そうですか…」
 皆さんは少しでも強くなる努力をしているんですね…
 私も…強くなりたいなぁ…
 高奈は少しぼーっとした様子で窓の外の空を見つめていた
 
 
 (…私も頑張らないといつか皆に追いつかれちゃうわね…)
 と綾鈴は頑張るぞ! と手を自分の目の前でグッと握り締めた
 
 その様子を少し離れている所から刀子は二人を見つめていた
 ふふ、色々と最近は静かになっていたが…溜めに溜めていた力が流れ出ている感じじゃな
 どれ…少し話を持ちかけてみるかの…
 
 
 
 少し離れた場所で一つの影…
 そこで何かを話している人が一人…
「…そう…分かった…スラン…始めよう」
 少し寂しい様子で会話を終わった…
 …さようなら…皆…
 
 
 そして…そこから少し離れた場所…事件が始まる混沌が忍び寄っていた…
 
 
 
 
 少し離れた場所…ゲートのがある門での事…
 
 
 (ふぅ…門番の仕事は暇だな)
 だがこれくらい…あの時に比べれば何とも無い
 主人も色々と強くなるために努力しているのだ…私も頑張らなければな
 
 
「あの〜…」
 ん?客か?
 見た目は少し小さいが…帝國の軍事服を着た女か…それと小さなバックを背負っているな
 
 
 
「何様で来た?」
 そう言われると軍事服を着た女の子は小さなバックから秘と書かれた封筒を取り出した
「これを進さんと言う人に届けに来ました」
「機密情報か…私が責任を持って届けよう」
「あっ…、いえ…これは魔法生物の方が触ると…大変な事になりますよ?」
「大変な事?」
「この前レイン・ジグランという魔法生物がこの中の場所に現れたのは知っていらっしゃいますよね?」
「…あぁ知っているとも」
「この封筒に魔法生物が触ると…結界で弾かれるのですよ」
「…本当か?」
「試してみますか?」
 
 
 ブラストは封筒に手を伸ばした
 
 
 
 ―――バチッ!
 ブラストが封筒に触れた部分が多少焦げてしまった
 
 
「む…」
 その軍事服を着た女の事は本当らしいな…
 そしてかなり強力な結界だ、私が直接封筒に触れただけでこの威力…軍人も用心しているようだな
 
 
「分かるように私が直接持っていかないと逝けないという事が分かりましたか?」
 ブラストは少し悩んでゲートを通る許可を出した
 
 
「ゲートに触れて魔力を込めればその場所に行ける、分かったか?」
 軍人の女の子はコクリと頷いてゲートに触れてその体が光に変わり消えてしまった
 
 
 
 …ふぅ…今日も何事も…
 
 
「ブラストさーーん!」
 ん?また客…!? あいつはさっきゲートに入ったはず…
 まさか…
 
 
 女の人はゼエゼエと息を上げ…しばらく深呼吸をした後あわてた口長で話し始めた
「ここに私の姿を借りた魔法生物が入ってきませんでしたか?!」
「今ゲートの中に…一体何が?」
 
 
 深刻な顔をしながら女の人は話し始めた
「…帝國の城に何者かが侵入して今日届ける予定だった書物と結界の印が書かれた封筒が盗まれたのです!」
「何?! なぜそれに帝國は気がつかなかった?」
 
 
「それが…かなりの熟練した手の者で警報やトラップなどをすべて作動させずに書庫に侵入…強奪されました…」
「目撃者は?」
「……マントに身を包んだ男です」
「! …目撃した者はどうなった?」
 
 
 下をうつむきながら重い口を開いた
「約一ヶ月は治療が必要なほど体がボロボロにやられていました…」
 
 
 ブラストは少しの間目を閉じた…
「…勇気ある軍人に感謝する」
 
 
「とりあえず今入って行った魔法生物を追いかけましょう!」
「…おそらくは無理だろうな」
「…それはなぜですか」
 
 
「…この前レイン・ジグランと言う奴がここに来た事は知っているな?」
「はい…それは分かっています」
「…そいつがまた来た時のためにゲートにロックをかけれるようにした」
「けど…場所が分からなければ意味が無いのでは?」
「ここまで巧妙な手を使ってくる奴だ…おそらくは…な」
「なぜここまで気づけなかったのかしら…」
 
 
 ブラストが深刻な顔つきで話し始めた…
「…おそらく私の予想では家の中に内通者がいる」
「! …本当なんですか」
「…だがあくまでも感だ…本当とは限らないが…無いともいえない…」
「…これからどうしますか?」
「お前は帝國に知らせてくれ、私はゲートを開ける方法を見つける」
「分かりました! 気をつけてください!」
 軍人の女の人はビシッ! と敬礼して城の方角に走っていった…
 
 
「…力ずくで開くとは思わないが…やって見る価値はあるな」
 そう言うとブラストの周りの魔力をかき集め始めた…
 
 
 
 〜空間内〜
 
 ゲート前に軍服を来た女の子がキョロキョロと辺りを見回している
「ここかな…もういいよ〜スラン〜」
 もういいの?私はまだこのままで良いんだけど?
 
 
「あの人に怒られたいの〜?」
 うっ…それはいやだなぁ〜はいはい…戻りますよー
 
 
 軍服がドロドロしたオレンジ色に変わり、地面に落ちた
「ん〜…疲れた〜やっぱり服になるのはきつかったかな〜?スライムでもこんなに何かに成れるのはそうそう居ないよ?」
「感謝してるよ〜スランには〜、あ〜…武器はドコにしまったっけ?」
 背中に背負ったバックを地面に下ろしてガサガサと探り始めた
 
 
「戦闘準備ね、私も人になるからちょっと待って〜」
 そうオレンジ色のスライムが言うとドロドロした形から頭・体から形ができていき…最後には頭にバンダナを巻いたスポーツ系の女の子になった
「いつもながらその能力は反則的〜切られてもスライムだから意味無いし〜」
「ふふふ、色々な姿になれるって事は有利だけど結構集中しないと使えないんだからね!」
 女の子のバックをガサガサと探す音が止まってバックに入らないと思える長い槍を取り出した
 
 
「あった〜これこれ〜♪これがなければ始まらないよ〜」
「準備も整ったし…始めますか!」
 
「うりゃ〜!」
 女の子は槍を手馴れた手つきでブンブンと振り回して地面にザクッ! と刺した
 
 
「お〜…あれ?抜けないよ〜」
 グイグイと引き抜こうとするがビクともしないらしい
 
 
「…はぁ…」
 女の子になったスライムは頭を抑えた
 
 
 
 〜アトリエ〜
 
 
 ふぅ…良い風…
 
 
 
 
 
 …あら?
「…風が…やんだ?」
 嫌な事が起きなければ良いんだけど…

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